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セドリックにエスコートされて、私は会場に入った。
陛下が言った。
「我が息子セドリックはエリザベス・ミリオンを婚約者に選んだ。」
『おめでとうございます。』…とか、『やっぱり』…とか、そんな声が聞こえる。
お父様とお母様は笑ってくれてるけるど、きっと心配してる。私が不幸にならないかって、いつもそれを1番に考えてくれる2人だから。
「リズ」
セドリックの表情がとても辛そうに思えた。
「ふふ、何て顔をしてるの。選ばれたんだから仕方がないわ。」
私を選ぶ。セドリックだって悩んだと思う。
「ねぇ、探してた子が私だっていつから気がついていたの?」
「入学してきた日から疑ってた。」
「…スタート地点じゃない。」
「確信を持ったのは『コチに付いてきて欲しい』と言った時の態度。」
「…まぁ、異常だったかもしれないけど、そんなもので確信が持てるはずないわよ。」
「あの時、『何故花を買っただけの女の子に会いたいのか』っと口走った。俺はどんな人に会いたいのか言った事はないのに。気が付いてなかったようだが。」
「……」
私は馬鹿だわ…。
「リズだって入学してすぐ俺に気がついてただろ。だから俺から顔を隠すようにしてた。」
「…隠してないわよ。」
「そう感じなかったが?」
「被害妄想は良くないと思うわ。」
「間違えてはいないからな。」
「……」
「選んで欲しくなかったんだろ?」
「…そうね、学者になる夢が潰えたもの。」
「そういう意味じゃない…」
「……」
私に貧困階級にいたという過去がなければ、この結婚にも悩まない。
私が街で倒れたからミリオン夫妻に見つけてもらえた。身寄りもない私を養女にも迎えてくれた。全て過去の私があってこそ。
どう転んでたって、私がセドリックに会う未来には幸せはなかったのね。
『立ち向かう』…それが出来ればやってる。でも、敵は物じゃなくて過去。どうしたって時間には逆らえない。
「私達、また皆に見られてダンスを踊るの?」
「そうなる。」
「そういえば、私は貴方としか踊った事がないわ。」
「そうだな。」
そう言ってセドリックがサッと手を差し出した。
「エリザベス様、俺と踊ってくれませんか?」
「仕方がないから、踊ってあげるわ。」
私は笑って手をとった。
「もっと言い方あるだろ…。」
ぶつくさ言いながらも、音楽が流れてきてダンスを踊る。
これが最後になる。
恋をするとどういう気持ちになるかなんて、オタクの私にはわからない。
ただ、最後に踊るのがセドリックでよかった。そう思う。
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