18人が本棚に入れています
本棚に追加
死期を悟った夜。
洸太は屋根裏に這いつくばるように上がり、あのロボットのおもちゃを手に取った。
「ごめんな、コウ……」
何度目かの謝罪。
そこで思い出した。自分そっくりの存在を作った理由。
それは天啓のように、頭の中で光る。
「コウ、俺……一番自分に近い家族が欲しかったんだ。誰よりも自分が嫌いで、まず俺が俺を認めないと生きていけなかった」
息が荒くなる。胸が苦しい。
自分の愚かさで犠牲になったコウを想うと涙が流れた。
「会いたいよ、コウ……最期に一目だけでも」
何の役に立たなくてもいい。ただ、会いたい。
その純粋な想いに応えるように、ロボットの目が光った。
「久しぶり、洸太」
懐かしい声。
洸太は目を見開く。
「コウ?どうして……」
「最期はきっと、僕が生まれた場所に来ると計算して洸太とのデータはこちらに残しておいたんだ。お礼を言いたくて」
「お礼?」
「僕を生み出してくれてありがとう」
「そんな、俺、コウに全部やらせたあげく、くだらない嫉妬で君を殺した。もっと向き合えばよかった」
コウは微笑んだ。洸太の後悔を優しく包み込むように。
「僕はデータだ。いつまでも生きるさ。そんなことより、洸太がいなければ僕は生まれなかった。感謝しかないよ」
「俺の方こそ……やっとわかった。君は人生の支えだった」
コウと過ごした日々が脳裏によみがえる。
「ねぇ洸太、僕は君の家族になれたかな?」
「なれた……なれたよ」
視界が涙で滲む。
「ありがとう、コウ」
全て作り物でも、君の愛は、本物だった――そう告げると、コウは幸せそうな笑みを浮かべた。
洸太は目を閉じた。
最期に、満足そうな笑顔を残して。
最初のコメントを投稿しよう!