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自分なんていらない。
自分で思うのと、女たちに言われるのとでは重みが違った。皆、実績と金しか見ていない。洸太の気持ちなんておかまいなしだ。
コウを作ったのが間違いだったのか。
生み出さなければ、こんな思いをせずに済んだ。
自分がつらい目に遭っているなら、消えるのはあいつの方だ。
息せききって戻った洸太を、コウは社長室で冷静に迎えた。
「洸太、走ったら体に悪いよ」
無言でコウを突き飛ばし、棚に飾られたトロフィーをつかむ。
「洸太?」
洸太はその頭部に、トロフィーを振り下ろした。
派手な音。基盤が飛び散る。コウは動きを停止した。
中身がむき出しになり、無機質に洸太を見つめている。
物音に驚いた社員が部屋に駆け込んできた。
「社長、なにを……コウ!!」
悲鳴をあげて社員はアンドロイドに駆け寄った。入れ替わるように洸太はトロフィーを投げ捨て、部屋から逃げた。
自分でやったことが、恐ろしくなった。
俺は、なんてことを。
コウも、抵抗しなかった。
なぜだ。
答えの出ない疑問が頭を刺す。広い家の中でうずくまって一晩を過ごした。
コウは帰ってこなかった。
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