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――今この瞬間すら、私は一人で別の楽園へ逝こうとしている。
家族に会うこともせず、ポイニクスが死んだ場所で。皮肉なものだ。
45年という長いようで短い人生。
息子の成長を見ることができないのは残念だが、楽園から見守るのも一つの手だろう。
愛する妻よ。私は直接言葉を伝えるのが苦手で、今まで言えなかった。私は君を生涯、死んでも愛している。
私の分まで、生きていてほしい。
愛する息子よ。私はお前の「父親」という存在になりきれなかった。すまなかった。ひどい態度をとってしまったと思っている。
でも私は、お前のことを妻と同じように死んでも愛している。
ポイニクス。お前にもう一度、会いたい、なんて、我儘を、聞いてはくれないか――?
『バサバサッ』
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