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* * *
「燕!」
翔太は談話室のドアを勢いよく開けた。
「お兄ちゃん!」
燕は翔太に気づくなり駆け寄り、抱きついた。
「ずっと1人で頑張らせて、ごめんね……」
「いいんだ……燕が無事なら、何だっていい」
翔太は優しい声でそう告げ、燕のことを抱き締め返した。
「お兄ちゃん……」
燕は涙を堪えながら、翔太の胸に顔を埋める。
「よかったな、2人とも」
聖夜はそんな2人を眺めて微笑んだ。
「燕ちゃん、明日改めて診察があるみたいだけど、多分退院できるって」
「そうか……ありがとう、聖夜」
「うん。……ところで、柊は?」
「一緒に帰ってきた。さっきまで花琳さん達と話していたが……」
2人にが柊を話題に上げた丁度その時、談話室のドアが開いて柊が入ってきた。
「ただいま~……」
「柊!」
聖夜は柊に駆け寄った。
「怪我とかしてないか?」
「心配しすぎ。大丈夫だよ」
「そっか……よかった」
「そんなに不安だったの?」
「うん……2人は強いから大丈夫だって信じてたけど、日が暮れた辺りからだんだん心配になってきちゃって……」
聖夜はそう言って苦笑いする。
「そっか……遅くなってごめんね」
柊が謝ると、聖夜はゆっくり首を横に振り、穏やかに微笑んだ。
「ううん。おかえり柊」
「うん。ただいま」
柊も、聖夜に微笑み返す。そうしていると、再びドアが開いて琴森が入ってきた。
「やっぱり、ここにいたのね。翔太君、柊さん、報告は?」
「あ!」
「すみません。今行きます」
「よろしい。……あ、聖夜君、あなたも呼ばれてたわよ」
「俺も?何でですか?」
「確か……渡したい物があるって言ってたわ」
「渡したい物か……分かりました。行ってきます」
「ええ。……燕さんは、私が病院まで送っていくから。3人とも行ってきて」
琴森に促され、3人は燕と別れて談話室を出た。
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