26 総隊長の過去

1/3
前へ
/232ページ
次へ

26 総隊長の過去

* * *  8年前、桜が舞い散る春の日のことだった。 「千秋!危ない!!」  青いマントを身に纏った、撫子色の長い髪の少女が千秋の前に躍り出た。 「『桜壁(おうへき)』!」  少女の声に呼応して、薄紅色に光り輝く無数の桜の花びらが、鋼鉄の体を持った高次元生物との間に大きな壁を作る。  その壁に高次元生物が生み出したエネルギーの塊が吸収された。 「千秋、夏実、眞冬、立て直そう!」  少女の声に3人は頷いた。彼女は4人のリーダー格だった。時空科学者、宵月明日人と共に何でも屋を始めた時も、特部最強部隊として戦闘を行う時も、彼女を中心に纏まっていた。 「眞冬、敵の弱点は?」 「今調べる。『読心』!」  眞冬は高次元生物の無意識を探った。意思の疎通はできないものの、ほんの僅かな心の動きを理解することで、眞冬には高次元生物の弱点を探知する力があった。 「左胸だ!」 「分かった。私と眞冬が援護するから、千秋と夏実は左胸を狙って!」 「了解。いくよ、千秋!」 「うん……!」  夏実と千秋が高次元生物に迫る。 「『抜刀』!」  夏実の手の中に黒い刀が現れた。それを握りしめ、夏実が高次元生物に斬りかかる。  しかし、鋼鉄の右腕で刀を受け止め、左腕で夏実を殴り飛ばした。 「うっ……!」 「夏実!」  眞冬は飛ばされた夏実を受け止め、その勢いのまま尻餅をついた。 「強い……!」 「なんて硬い体なの……」
/232ページ

最初のコメントを投稿しよう!

67人が本棚に入れています
本棚に追加