67人が本棚に入れています
本棚に追加
26 総隊長の過去
* * *
8年前、桜が舞い散る春の日のことだった。
「千秋!危ない!!」
青いマントを身に纏った、撫子色の長い髪の少女が千秋の前に躍り出た。
「『桜壁』!」
少女の声に呼応して、薄紅色に光り輝く無数の桜の花びらが、鋼鉄の体を持った高次元生物との間に大きな壁を作る。
その壁に高次元生物が生み出したエネルギーの塊が吸収された。
「千秋、夏実、眞冬、立て直そう!」
少女の声に3人は頷いた。彼女は4人のリーダー格だった。時空科学者、宵月明日人と共に何でも屋を始めた時も、特部最強部隊として戦闘を行う時も、彼女を中心に纏まっていた。
「眞冬、敵の弱点は?」
「今調べる。『読心』!」
眞冬は高次元生物の無意識を探った。意思の疎通はできないものの、ほんの僅かな心の動きを理解することで、眞冬には高次元生物の弱点を探知する力があった。
「左胸だ!」
「分かった。私と眞冬が援護するから、千秋と夏実は左胸を狙って!」
「了解。いくよ、千秋!」
「うん……!」
夏実と千秋が高次元生物に迫る。
「『抜刀』!」
夏実の手の中に黒い刀が現れた。それを握りしめ、夏実が高次元生物に斬りかかる。
しかし、鋼鉄の右腕で刀を受け止め、左腕で夏実を殴り飛ばした。
「うっ……!」
「夏実!」
眞冬は飛ばされた夏実を受け止め、その勢いのまま尻餅をついた。
「強い……!」
「なんて硬い体なの……」
最初のコメントを投稿しよう!