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高次元生物は動かなくなり再びその場に倒れた。彼女の身体から、赤く染まった鋼鉄の腕が抜ける。
千秋はよろよろと少女に歩み寄り、その体を抱きかかえた。少女の腹部から、血が止まらない。
「春花!春花……!」
「ちあ……き……」
「特部の医務室じゃ手に負えねぇ……。千秋!止血してろ!すぐに救急車を呼ぶ!!」
眞冬の声にハッとした千秋は、自分のマントを破り、必死に傷口を圧迫した。しかし、血が止まる気配はない。
「春花……」
傍らで夏実が泣きそうな声を出す。それを見て春花は無理矢理微笑んで見せた。
「夏実……泣かないで……」
「春花、もう喋っちゃ駄目だ!」
「いや……喋らせて……」
千秋の制止を無視して、春花は口を開いた。
「眞冬……いつも明るくて……頭も良くて……頼りにしてた」
「春花……くそっ……!」
眞冬が苦しそうに春花から目を背ける。
「夏実……しっかり者で、お姉ちゃんみたいだった。私の1番の親友だよ……」
「春花……私も春花のこと、親友だって思ってるよ……!」
夏実が震える声でそう言うと、春花は目を細めた。そして視線を千秋に移してその頬に触れた。
「千秋……不器用だけど、優しくて、格好よくて……大好きだった……ずっと……ずっと前から」
千秋はその手を握り、涙を堪えながら口を開いた。
「……僕もだよ。僕も、春花のこと……ずっと……」
「……うん」
春花は頷いて、胸元からチェーンのネックレスを取り出した。ネックレスの先端には、桜を象った指輪が通されていた。
「これ……千秋が持ってて。大事な指輪……私には、ちょっと大きかったんだ」
「……分かった。大事にするから……だから……」
「千秋、私……守ってるから……だから、千秋は前に進んで」
「……うん」
千秋が頷いたのを見届けて、春花は目を閉じた。
ただ、桜吹雪が4人の元に降り注いでいた。
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