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28 旭と柊
* * *
聖夜はマットレスを柊の部屋に運び込むと、床に敷いた。
「これでよしっと」
「すみません……手間をかけさせて……」
「あ、いいよいいよ!俺が手伝いたかっただけだから」
聖夜はそう言って、申し訳なさそうな旭に笑いかけた。
「ゆっくり休んで、その怪我も早く治るといいな」
「は、はい……」
裏表のない笑顔を向けられ、旭は顔を赤くした。その様子を見た柊が大きく咳払いをする。
「もう遅いし、寝る支度しよ。ほら、聖夜もおやすみ!」
「ああ……そうだな。柊、旭、おやすみ」
「お、おやすみなさい!」
聖夜が外に出て、バタンと扉が閉まる。柊はまだ顔が赤い旭を見て、少し胸が苦しくなった。
(……聖夜、優しいもんね。それを分かってくれる人がいるのは嬉しいけど……少し寂しい)
「あ、あの……どうかしましたか?」
「えっ?ああ、えっとね……」
柊は自分の気持ちを言おうか言うまいか迷った挙げ句、旭に尋ねた。
「旭は、聖夜が好き?」
「すっ……好き!?どうしてですか!?」
「反応を見て……なんとなく」
「なんとなくって……」
「実際、どう?」
「……えっと」
旭は真っ赤な顔で俯いた。部屋にしばらく沈黙が流れる。なんとも言えない緊張が走る中、旭はゆっくり口を開いた。
「実際に会ったのはさっきが初めてですから、好きなのかは分からないけど……『未来予知』で視たときから、ずっと会いたくて……」
「憧れてた?」
「そ、そうです!闇に立ち向かう姿が格好よくて……」
「そっか……」
柊は少し安心している自分を心の中で笑った。
(私、何でホッとしてるのかな……)
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