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「えっと……柊さん?」
「あ、ごめん……考え事してて……」
「もしかして、柊さんも聖夜さんに憧れて……!?」
「違うから!そうじゃないよ!」
「そ、そうなんですか?」
「そうだよ!聖夜はただの兄貴だもん!お人好しで、馬鹿みたいに優しくて、放っとけないただの……」
(ただの?違うな。唯一の兄弟だ。大事な……家族だ)
そのことに気が付き、柊は黙り込んでしまう。その様子を見て、旭は彼女の心の中を察して微笑んだ。
「……とっても大事なんですね。聖夜さんのこと」
「うん……そうかも」
柊は少し深呼吸をして気持ちを落ち着けた。
(私、聖夜が取られちゃうって思ってたのかな……子どもみたい。早とちりだったし、聖夜の幸せは、願うべきだし)
「柊さん?」
「まあ、好きになったら教えて。協力するし」
「か、揶揄わないで下さい!」
「あはは、ごめんごめん」
笑ってはみたものの、柊はまだ落ち着けなかった。
「……先にシャワー浴びてもいいよ。とりあえず、パジャマは私の貸すから」
柊はそう言うとタンスから自分の服を取り出して旭に手渡した。
「あ、ありがとうございます……でも……」
口ごもる旭を見て、柊は何かを察した。
「もしかして、怖い?」
「はい……暗い場所と狭い場所はどうしても……」
「なら、大浴場行こ。私も一緒に行くし、暗くも狭くもないから」
「あ、ありがとうございます!」
安心した表情を浮かべる旭を見て、柊は微笑んだ。
「じゃあ、行こっか」
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