67人が本棚に入れています
本棚に追加
* * *
2人は大浴場に着くとシャワーの前に腰掛けた。2人はそれぞれ黙々と頭を洗い、体を洗う。
自分の体を流し終えたところで、柊は隣に座った旭に声をかけた。
「背中、流そうか?」
「あ、ありがとうございます!」
旭はピンと背筋を伸ばした。柊は、背中を洗おうとスポンジを片手に彼女の後ろに立つ。すると、その背中のあちこちにある傷が目に入った。
(酷い怪我……辛い目に遭ってきたのかな……)
柊は傷が痛まないように気をつけながら、優しく背中を洗った。
「痛くない?」
「だ、大丈夫です」
柊は背中を流し終えると、シャワーを止めて立ち上がった。
「湯船に浸かりたい所だけど……その怪我だと難しいかな?戻る?」
「はい……そうします」
2人が浴場を後にしようとした時、ドアが開いて清野が入ってきた。
「清野さん!」
「おや、柊さんと……噂の旭さんかな?」
「そうですけど……う、噂って?」
「敵から逃げてきた少女。失踪した宵月博士の手帳を持ってきたキーパーソン……など。突然現れた君のことで職員の話題は持ちきりだ」
清野が淡々と答えるのに対し、自分が話題に上がっていることに緊張した旭は顔を強ばらせる。
「そう、ですか……」
「ああ。ところで……君、随分怪我をしているね。それでは湯船に浸かれないだろう?」
「は、はい……だから今出ようと思って」
控えめにそう答える旭に向かって、清野は優しく微笑んだ。
「私が治そう」
「え?」
戸惑う旭を余所に、清野は怪我の箇所に手を当てる。すると傷がみるみるうちに治っていった。
「すごい……」
「私の能力だよ。医務室で働いているから、何かあったら遠慮無く来るといい」
「あ、ありがとうございます!」
旭はぺこりとお辞儀をした。すると再びドアが開いて、今度は花琳がやってきた。
最初のコメントを投稿しよう!