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30 緊急事態
* * *
翌朝、柊は旭を連れて聖夜の部屋を訪れた。コンコンと扉を叩くと、ドアが開いて聖夜が顔を出す。
「あ、来たな!」
「聖夜、おはよう」
「お、おはようございます!」
「2人ともおはよう。朝ご飯できてるぞ。ほら、入った入った!」
「お邪魔します……」
2人が部屋に入ると、テーブルの上に3人分の朝食が並んでいるのが見えた。今日、聖夜が作った朝食は、卵焼きとほうれん草のおひたし、豆腐となめこが入った味噌汁に、温かいご飯だ。
「美味しそう……」
旭が思わずそう呟いた途端、彼女のお腹がぐーと鳴った。それを聞いた双子が顔を見合わせて笑う。
「あはは!早く食べよう」
「そうだね」
聖夜と柊は席に着き、姿勢を正して手を合わせた。それを見た旭も慌てて2人に倣う。
「いただきます」
「い、いただきます!」
「ん、卵焼き美味しい」
「だろ!今日の自信作なんだ」
「旭、美味しいね……って、え!?泣いてる!?」
ぽろぽろと涙を流しながら卵焼きを口に運んでいる旭を見て、柊はぎょっとした。
「まずかったか……?」
聖夜も心配そうに旭を見る。しかし、旭は首を横に振った。
「……美味しいです。こんなに温かいご飯、食べたことない……」
泣きながら箸を進める旭に、聖夜は微笑んだ。
「なら、これから沢山食べよう。俺と柊と一緒にさ」
「いいんですか?」
「当然。旭は仲間だからな」
「ありがとうございます……聖夜さん」
「聖夜でいいよ。旭」
聖夜はそう言って旭に優しく微笑んだ。その表情を見て柊の胸がざわつく。
(まただ……ううん、気にしちゃ駄目。何か別の話題……)
柊はとにかく何か話さなければと口を開いた。
「今日、良い天気だね」
「え、曇ってないか?」
「えっ……」
慌てて窓の外を見ると、確かに曇り空が広がっていた。
「ほ、ほんとだ……」
聖夜は呆然とする柊を心配そうに見つめた。
「柊、もしかして何かあった?」
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