31 西日本支部

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「花琳が……僕のことを……?」  白雪は動揺を隠しきれない様子で花琳を見た。しかし、目の前の彼女は無感情な目でこちらを見据えている。銃口は、確実に白雪の心臓に向けられていた。 「今更気づいても遅いけどね!もうお姉さんには届かない!お兄さんはお姉さんに殺されるの!」 (……僕は、花琳の想いを踏みにじっていたのか?)  後悔と自責の念が白雪の頭をぐるぐると回る。その時。 『白雪、落ち着け』  白雪の頭の中に杏子の声が響き渡った。 「杏子さん……?」 『静かに。私の能力、『テレパシー』だ。敵にこちらの話が聞かれては面倒だからな』 (なるほど……それで、どうしたんですか?) 『今私達が直面してる問題は、花琳が洗脳されていることだ。何とかして彼女を正気に戻さなければ、何も始まらない』 (分かってます……でも、どうしたら) 『君の言葉だ』 (え……?) 『白雪の言葉なら……花琳に届くかもしれない』 (僕の……言葉?)  杏子は頷いた。 『長い間一緒に戦ってきた……ずっと思いを寄せてきた相手の言葉なら、花琳を正気に戻せるはずだ』 (……僕にできるかどうか) 『弱気になるな。……君だって花琳のことが好きなのだろう?』  杏子の思いがけない言葉に、白雪は目を見開いた。 (……なんで) 『見てれば分かる。その気持ちを、ずっと隠そうとしてきたことも……支部は違えど長年の付き合いだからな』  そう言って杏子は微笑んだ。 『私達が援護する。……覚悟を決めろ』 (……分かりました)  白雪は花琳を見据えて立ち上がった。それを見た花琳が身構える。 『美純、『影』で花琳の動きを封じてくれ!』 「……はい!」  美純が地面にある自分の影に手を触れると、影が伸び、花琳の影を縛った。 「……!」  花琳の体が強ばり、身動きがとれなくなる。銃の引き金を引きたくても引けない。花琳は目線だけで美純を睨んだ。
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