31 西日本支部

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「花琳……」  白雪は花琳の元へ歩み寄った。花琳が鋭く白雪を睨む。それでも白雪は歩みを止めなかった。 「……『木の葉』」  花琳の周辺に木の葉が渦巻く。まるで白雪を拒むように。 「白雪!」 「構わないさ……『氷結』」  木の葉が一瞬で凍り付き、パラパラと砕ける。 「はぁ……」  白雪の息は白く、制御しきれないアビリティのせいで彼の周辺の温度が下がっていることが分かった。 「お兄さん、何するつもり?何しても無駄だよ?」  揶揄うように笑うエリスを、白雪は睨んだ。 「……黙っててくれ」  白雪が指を鳴らすと、エリスの体が凍り付いた。 「なっ……!?」 「それ以上凍らせられたくなかったら……口を閉じろ」 「う……」  白雪の気迫に、エリスは思わず怯む。彼女が口を閉じたのを確認し、白雪は花琳に向き直った。 「花琳……今までごめん。何も気づかなくて」 「……」 「僕の勝手で、ずっと君を傷つけていたのかもしれない」  白雪は語りかけるが、花琳は変わらずに白雪を睨み付けている。木の葉が発生し、白雪めがけて飛んできた。 「くっ……」  白雪は躱すが、葉がギリギリ頬を掠めた。右頬が切れ、血が一筋流れる。 「……そうだよね。隠し事をしている人なんて信じられないよね」    白雪は頬の血を拭い、花琳を真っ直ぐ見据えた。 「僕は……君に嘘をついていた」 「嘘だって……?」  白雪の思いもよらない一言に、杏子は目を見開いた。 「……本当は覚えてたんだ。君に初めて会った日のことを」
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