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小学1年生の白雪は、特部の廊下を歩いていた。右手にメイドが焼いてくれたクッキーの入った袋を持って、通い慣れた姉の春花の部屋を目指して歩いていたのだ。
「姉さん、帰ってきたかな?」
白雪が医務室の前を通りがかったその時。
「うわぁぁぁん!」
部屋から大きな泣き声が聞こえて、白雪の足が止まった。
(誰か泣いてる……?)
白雪がそっと医務室の中を覗くと、自分と同い年位の少女が、ベッドの横で泣いていたのだ。
「海奈が……お姉ちゃんなのに、私がちゃんと守れなかったから……」
「落ち着いてくれ……大丈夫。眠っているだけだから……」
泣きわめく少女を見て、清野はすっかり困り果てていた。それを見て居ても立っても居られず、白雪は医務室の中に入った。
「ねぇ、どうしたの?」
「おや、白雪君。……実は、この子の妹が怪我をしてしまってね。心配で泣き止まないんだ」
「そうなんだ……」
白雪は泣きじゃくる少女に歩み寄り、クッキーを1枚差し出した。
「え……」
「あげる。美味しいよ!」
少女は戸惑いながらもそれを受け取り、一口囓った。控えめな甘さとバターの香りが少女の口の中に広がる。
「美味しい……」
「でしょ!」
白雪は満面の笑みを少女に向け、彼女の隣の椅子に座った。
「僕、北原白雪。君は?」
「……美ヶ森花琳」
「花琳って言うんだ!可愛い名前だね」
唐突に褒められ、花琳は顔を赤くした。
「……白雪君も、いい名前だと思うわ」
「ふふっ、ありがとう!」
白雪はそう言って笑った。
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