31 西日本支部

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「花琳って、遠くから来たの?」 「うん。お父さんと海奈と遊びに来たんだけど……高次元生物に襲われて、海奈が……」  花琳の目に再び涙が浮かぶ。それを見た白雪は花琳の手を握った。 「大丈夫だよ。きっと大丈夫……。特部が守ってくれたから怪我も大したことないし、きっとすぐ目を覚ますよ」 「……うん」  花琳は泣きそうになるのを堪えながら頷いた。 「……白雪君」 「何?」 「白雪君は、特部の人なの?」 「ううん……姉さんが特部なんだ。僕は体が弱いから……でも、いつか特部に入りたいと思ってる」 「高次元生物と戦うために?」  花琳の問いかけに、白雪はにこりと笑って頷いた。 「姉さんみたいに、皆を守れるようになりたいんだ!」 「……素敵だね」 「そうかな?」 「うん。白雪君ならきっとなれるわ」 「花琳……ありがと!」  白雪は明るい笑顔を見せた。つられて花琳も笑顔になる。  その時、医務室のドアが開いて、マントを着けた撫子色の長い髪の少女が入ってきた。 「白雪!ここにいたんだ」 「あ!姉さん!」  白雪は春花に駆け寄った。 「これ、姉さんに持ってきたんだ!メイドさんが焼いてくれたんだよ。みんなで食べよう!」 「あ、クッキーだ!千秋達も呼ぼうかな……。ねえ、あなたも来る?」  春花の言葉に、花琳は慌てて首を振った。 「海奈の傍にいたいから……」 「そっか。早く治るといいね!」  春花はそう言って花琳に微笑みかけた。 「それじゃ白雪、行こっか」 「うん!花琳、じゃあね!」 「う、うん!」  白雪は花琳に大きく手を振って医務室を後にした。
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