5 反対

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* * *  2人は家に着くなり夏実に尋ねた。 「どうしてそんなに止めるんだ?」 「それだけじゃなくて、どうして私達を特部から遠ざけてたの?」 「……ちゃんと話すから、座って」  夏実に促されて2人はリビングの椅子に座った。夏実もまた、双子の向かい側に座り、2人のことを真っ直ぐ見つめて口を開く。 「少し昔の話になるけど、聞いてくれる?」  2人は黙って頷いた。 「……昔ね、私も特部に所属していたの。でも、親友を任務で亡くしてしまって」  夏実は唇を噛み、やがて、自分が学んできた現実を、2人に告げる。 「2人とも、人は簡単に死ぬの。その人がどんなに大切でも。明日も一緒だって信じていても……。特部のように日常的に戦うのなら尚のこと……ね」  2人をしっかりと見据えて、夏実は続けた。 「だから、2人を特部にだけは入隊させたくなかった。そのためにお母さんにも協力してもらって、2人の記憶を『操作』していたの。お母さんのアビリティでね。それから、2人に極力特部の情報を与えないように注意もした。でも……2人は特部に連れて行かれた」  そこまで言うと、夏実はその整った顔を悲しそうに歪めた。 「夏実姉ちゃん……」 「……私は、2人が選んだ道なら何も言わない。でも、今日は普段と訳が違う。いつもよりも、よく考えて……明日の朝、答えを聞かせて欲しい」  夏実はそう言って自室へ戻ってしまった。 「……柊は、どう思う?」  聖夜は傍らに居た柊に問いかけた。 「私は、夏実姉さんの気持ち分かる。今日、成り行きでも任務に出て……倒れて、死ぬかもって思ったし、聖夜や翔太君が居なかったらほんとに……」  そこまで言うと柊は黙りこんだ。 「……俺も、翔太が居なかったら大怪我をしてた」  聖夜は静かに頷いた。 「でも、俺は特部に入ろうと思う。それで助けられる人が居るなら、俺はその人達のために頑張りたい。柊はどう思う?」 「……うん。私もそう思う。お母さんも、誰かのために頑張れる人になりなさいって言ってたし、特部でなら、それが叶う気がする。……それにさ」  柊は聖夜に笑いかけた。 「2人なら大丈夫だよ」  聖夜も柊に微笑んで頷いた。 「……うん。2人で頑張ろうな!」  双子は笑いあって、お互いに決意を固めたのだった。
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