31 西日本支部

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「先に帰ってるぞ。2人とも」 「……ぼ、僕達も行きます」  白雪は慌ててついて行こうとしたが、花琳に服の裾を掴まれ立ち止まった。 「花琳?」  突然のことに戸惑う白雪を見て杏子はにやりと笑った。 「気にするな。積もる話もあるだろう。ゆっくり話しながら来るといい」 「ち、ちょっと……」 「報告は私達に任せろ。それじゃあな」  そう言って、杏子をはじめとする西日本支部の面々は遊園地を出て行ってしまった。 「……花琳、どうしたの?」  白雪が尋ねると、花琳は恥ずかしそうに目を逸らした。 「……聞きたいことがあって」 「聞きたいこと?」 「……さっき言ってたこと、全部本当?」 「……僕が君を好きだってこと?」 「そ、それとか……私の言葉を支えにしてくれてたとか……」  ごにょごにょと話す花琳を見て、白雪は吹き出した。 「ふっ……」   「な、何がおかしいの!?」 「いや……可愛いなって」  白雪に無邪気な笑顔でそう言われ、花琳は真っ赤な顔で頬を膨らませた。 「もう、揶揄わないでよ!」  花琳の怒った顔を見て、白雪は慌てて謝る。  ただし、嬉しそうな笑顔は崩さずに、だ。 「ごめんごめん……本当だよ。全部本当。どうして?」 「……そんな素振り見せなかったから」  花琳にそう言われ、白雪は少し目を伏せた。 「それは……隠してたから。ずっと後ろめたくて……」 「後ろめたいことなんてあったの……?」    花琳が首を傾げた。それを見た白雪は少し苦笑いする。 「……姉さんのようになるために、僕は自分を押し殺してた。それだけじゃない。姉さんを守ってくれなかった、総隊長のことも、ずっと憎んでいた。再会した時……君は何も変わっていなかったのに、僕は……こんなに醜く変わってしまった……」  白雪はそこまで言うと、目を閉じて切なそうに笑った。 「だから、君への想いも、伝える資格すらないって思ってたんだ」  そう言う白雪に対して、花琳はゆっくりと首を横に振った。 「そんなこと……気にしないわ」 「え?」 「どんな白雪君も、白雪君だもの。私を励ましてくれた優しい白雪君と、目の前にいる白雪君は同じ人でしょ?」   「花琳……」 「それに……白雪君は変わったなんて言ったけど、優しいところは、今も昔も変わってないわ」  花琳はそう言って、優しい笑顔で彼を見つめた。白雪も、その笑顔に穏やかな微笑みで応える。 「花琳……ありがとう」 「……うん。だから、これからもよろしくね。白雪君」  花琳の言葉に、白雪は優しく頷いた。2人は並んで歩きながら、遊園地を後にした。
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