32 北日本支部

2/12
前へ
/232ページ
次へ
 建物の入り口は開いていたものの、崩れた瓦礫が燃え盛っており簡単に入れる様子ではなかった。 「こ、ここから入るのは厳しいんじゃ……」  深也の言葉に、翔太も舌打ちをした。2人の様子を見た海奈が、一歩前に出る。 「待った!……俺に任せてくれ」  海奈は手の平を入り口に向けた。 「『激流』!」  激しい勢いで水が流れ、入り口付近の炎が水蒸気を上げながら消えていく。 「俺は届く範囲の火を消していく。2人は先に中へ!」 「分かった」 「む、無理しないでね」  深也と翔太は頷き、建物の中へ入っていった。 * * *  玄関ホールに火の気は無く、天井から水が降り注いでいた。 「雨……?」 「水のアビリティ……?海奈か?」 「海奈はまだ外にいるよ……」 「なら誰が……」  その時。 ドーーーン!!  上の階から爆発音が聞こえた。その衝撃で建物が揺れる。 「……時間が無い。今は隊員を助けるぞ」 「う、うん……でもどこにいるんだか……」  深也は辺りを見渡した。建物中に雨が降っているお陰で、建物の中は外ほど酷く燃えてはない。ただ、外側のダメージを考えると、いつ崩れてもおかしくないだろう。  冷静に、しかし早く……この状況に対処する必要がある。  深也は心を落ち着けながら頭を働かせ、状況を整理した。 「オペレーターと会っていないということは司令室方面にはいないはず。……てことは、寮の方にいる可能性がある……?」  深也の呟きに、翔太は頷いた。 「……確かに。そうかもしれない」 「行こう。翔太君」  2人は駆け足で、隊員達の寮の方向に急いだ。
/232ページ

最初のコメントを投稿しよう!

67人が本棚に入れています
本棚に追加