67人が本棚に入れています
本棚に追加
建物の入り口は開いていたものの、崩れた瓦礫が燃え盛っており簡単に入れる様子ではなかった。
「こ、ここから入るのは厳しいんじゃ……」
深也の言葉に、翔太も舌打ちをした。2人の様子を見た海奈が、一歩前に出る。
「待った!……俺に任せてくれ」
海奈は手の平を入り口に向けた。
「『激流』!」
激しい勢いで水が流れ、入り口付近の炎が水蒸気を上げながら消えていく。
「俺は届く範囲の火を消していく。2人は先に中へ!」
「分かった」
「む、無理しないでね」
深也と翔太は頷き、建物の中へ入っていった。
* * *
玄関ホールに火の気は無く、天井から水が降り注いでいた。
「雨……?」
「水のアビリティ……?海奈か?」
「海奈はまだ外にいるよ……」
「なら誰が……」
その時。
ドーーーン!!
上の階から爆発音が聞こえた。その衝撃で建物が揺れる。
「……時間が無い。今は隊員を助けるぞ」
「う、うん……でもどこにいるんだか……」
深也は辺りを見渡した。建物中に雨が降っているお陰で、建物の中は外ほど酷く燃えてはない。ただ、外側のダメージを考えると、いつ崩れてもおかしくないだろう。
冷静に、しかし早く……この状況に対処する必要がある。
深也は心を落ち着けながら頭を働かせ、状況を整理した。
「オペレーターと会っていないということは司令室方面にはいないはず。……てことは、寮の方にいる可能性がある……?」
深也の呟きに、翔太は頷いた。
「……確かに。そうかもしれない」
「行こう。翔太君」
2人は駆け足で、隊員達の寮の方向に急いだ。
最初のコメントを投稿しよう!