32 北日本支部

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* * *  逃げ遅れた隊員を探す2人が、寮の廊下に差しかかった、その時。 「なんだよ!大したことねぇな!」 「う……」  2人の目に、背の高い赤髪の青年が、白いマントを身につけた少年を踏みつけている光景が飛び込んできた。青年は左目に眼帯を付けているものの、右目からだけでも恍惚とした感情は伝わってくる。 「雨を降らせたのは頭が良かったが、それも1階だけ……しかも、そのせいで力を使いすぎてヘロヘロ!馬鹿な奴だな!」  青年が手を握りしめると、拳が炎に包まれる。青年は踏んづけていた少年の胸倉を掴むと拳を振り上げた。 「これで終わりだ!」 「させるか!『突風』!」  強い風が吹き荒れ、青年が思わず手を離す。 「……!誰だ!?」 「特部中央支部だ。お前の方こそ何者だ!?」  翔太に問われ、青年はニヤリと笑う。 「俺が何者かって?そんなもの名乗る必要はないね!『火炎弾』!」  青年の手から青い炎が放たれる。翔太はそれを躱し反撃の構えを取った。 「『かまいたち』!」  翔太の掌から、風の刃が青年に向けて飛んでゆく。しかし青年はそれを難なく躱すと豪快に笑った。 「ははっ!ここに来た勇気は認めるが、お前1人で何ができる!」 「……確かに俺1人ではお前を倒せないかもしれない。だが、俺は1人じゃない」 「は?何を言って──」  次の瞬間、青年の背後に深也が現れた。 「……油断してくれて助かったよ」 「何っ!?」  青年が振り返る間もなく、深也は背後から青年の腕を締め上げた。青年は身動きが取れず、苦しそうに深也を見る。 「ぐっ……!」 「降参したら?今なら僕らも手荒な真似はしない」  深也は青年に向かって冷静に話す。しかし、青年は不敵に笑った。 「……ははっ!何だよ。お前らやるじゃねぇか」 「……君、今の状況分かってる?」 「分かってないのはお前の方だ!」  青年がそう言った瞬間、深也と青年の周辺に青い炎の渦が発生した。 「……!ばかな……」  深也は突然の出来事に驚き、青年から手を離した。 「はは!形勢逆転だ」
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