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翔太が驚き目を丸くしていると、前線から下がってきていた、栗色のボブヘアーの、北日本支部の少年が口を開いた。
「おらの『召喚』で、2階で無事だった壁を呼び出したんだ。」
「召喚……ってことは、この雨も?」
「うん。雨が降っているところから呼び出した。力不足で1階にしか降らせられなかったけど……」
「……いや、十分だ。ところで君は……」
「おらは仲村実。北日本支部のリーダーだ。」
実はそう言って翔太に笑顔を向けた。
「北日本支部……確か他に2人居たよな?」
「セナとノアは他の任務で留守だったんだ。だから、おらが北日本支部を守らねばまいね。なのに……全然歯が立たなかった」
落ち込む実に、深也が慌てて声をかける。
「あ、あいつ強いから……1人で戦うのは厳しいよ。雨降ってる中であの威力の炎を飛ばしてくるんだから……」
深也の言葉に、翔太も頷いた。
「ああ。アビリティは総隊長と同じだが、俺達を本気で倒そうとしてきている分あいつの方が強い」
「一体どうしたらいいんだ。俺達……」
海奈の呟きに、その場にいた全員が黙り込んでしまった。
(……海奈の『水』も効かなかった。多分あれがあいつの本気なんだ。なら、僕達に……僕にできることは何だ?)
深也は考えを巡らせる。腕は痛むが、頭は妙に冴え渡っていた。
「……僕達が僕達の力だけで完全勝利をするのは難しい。でも、ここにある全てのものを使ったとしたら?」
「何か思いついたのか?」
翔太の言葉に、深也は力強く頷いた。
「……うん」
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