32 北日本支部

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 翔太が驚き目を丸くしていると、前線から下がってきていた、栗色のボブヘアーの、北日本支部の少年が口を開いた。 「おらの『召喚』で、2階で無事だった壁を呼び出したんだ。」 「召喚……ってことは、この雨も?」 「うん。雨が降っているところから呼び出した。力不足で1階にしか降らせられなかったけど……」 「……いや、十分だ。ところで君は……」 「おらは仲村実(なかむらみのる)。北日本支部のリーダーだ。」  実はそう言って翔太に笑顔を向けた。 「北日本支部……確か他に2人居たよな?」 「セナとノアは他の任務で留守だったんだ。だから、おらが北日本支部を守らねばまいね。なのに……全然歯が立たなかった」  落ち込む実に、深也が慌てて声をかける。 「あ、あいつ強いから……1人で戦うのは厳しいよ。雨降ってる中であの威力の炎を飛ばしてくるんだから……」    深也の言葉に、翔太も頷いた。 「ああ。アビリティは総隊長と同じだが、俺達を本気で倒そうとしてきている分あいつの方が強い」 「一体どうしたらいいんだ。俺達……」  海奈の呟きに、その場にいた全員が黙り込んでしまった。 (……海奈の『水』も効かなかった。多分あれがあいつの本気なんだ。なら、僕達に……僕にできることは何だ?)  深也は考えを巡らせる。腕は痛むが、頭は妙に冴え渡っていた。 「……僕達が僕達の力だけで完全勝利をするのは難しい。でも、ここにある全てのもの(・・・・・・・・・・)を使ったとしたら?」 「何か思いついたのか?」  翔太の言葉に、深也は力強く頷いた。 「……うん」
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