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* * *
(……ここは?)
深也は目を覚ますと、中央支部の談話室にいた。
(夢か……走馬灯か?)
壁に掛かったカレンダーは、2年前の5月29日のものだった。
(……僕が初めて特部に来た日だ)
深也はその日のことを思い返す。
(確かこの日は……)
深也が記憶を手繰り寄せていると、談話室の扉が開いてポニーテールの少女が入ってきた。
当時の海奈だった。
「だーかーら!あたしは深也と仲良くなりたいんだって!」
海奈に手を引かれ、前髪の長い、背中を丸めた少年が談話室に連れ込まれる。
(僕だ……)
深也は、中学生だった頃の自分と、海奈の様子を窺った。
「……でも、僕といても良いことないし」
中学生の深也はそう言って俯いた。しかし、海奈は屈託のない笑顔を向ける。
「良いことがあるから一緒にいるんじゃないよ!折角仲間になったから話したいんだよ」
「で、でも……」
「でも、は禁止!なんでそんなに自信ないんだ?」
「……僕、根暗だから。色んな人から嫌われてるし……そんな自分も嫌いだし……」
そう言って、更に体を縮こめる深也に対して、海奈は溜息をつく。しかし、その後すぐに、力強く深也の肩を掴んで、明るく笑った。
「あたしは深也を嫌わない!それに、自分が嫌いなら変わればいいんだ!」
「変わる……?」
「そう!自分の好きな自分に変わる!そんで、嫌いだって言ってきた奴を見返す!あたしも応援するからさ」
「……でも、できるかどうか……」
「できるさ。あたし、信じてるから!」
そう言って笑顔を向ける海奈に、中学生の深也は顔を赤くして俯いた。
(……そういえば、この時だったな。海奈のことが好きになったの)
深也の脳裏に、海奈の笑顔がよぎった。
(海奈が信じてくれたから、少しだけど、変われた気がする。特部の仲間とも出会えて、少しだけ自分が好きになれた)
深也の胸が熱くなる。
(……生きたい。もう一度海奈に……皆に会いたい!)
深也の視界が、白くぼやけ始めた。
(夢なら……覚めろ!)
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