32 北日本支部

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* * * (……ここは?)  深也は目を覚ますと、中央支部の談話室にいた。   (夢か……走馬灯か?)  壁に掛かったカレンダーは、2年前の5月29日のものだった。 (……僕が初めて特部に来た日だ)  深也はその日のことを思い返す。 (確かこの日は……)  深也が記憶を手繰り寄せていると、談話室の扉が開いてポニーテールの少女が入ってきた。  当時の海奈だった。 「だーかーら!あたしは深也と仲良くなりたいんだって!」  海奈に手を引かれ、前髪の長い、背中を丸めた少年が談話室に連れ込まれる。 (僕だ……)    深也は、中学生だった頃の自分と、海奈の様子を窺った。 「……でも、僕といても良いことないし」  中学生の深也はそう言って俯いた。しかし、海奈は屈託のない笑顔を向ける。 「良いことがあるから一緒にいるんじゃないよ!折角仲間になったから話したいんだよ」 「で、でも……」 「でも、は禁止!なんでそんなに自信ないんだ?」 「……僕、根暗だから。色んな人から嫌われてるし……そんな自分も嫌いだし……」  そう言って、更に体を縮こめる深也に対して、海奈は溜息をつく。しかし、その後すぐに、力強く深也の肩を掴んで、明るく笑った。 「あたしは深也を嫌わない!それに、自分が嫌いなら変わればいいんだ!」 「変わる……?」 「そう!自分の好きな自分に変わる!そんで、嫌いだって言ってきた奴を見返す!あたしも応援するからさ」 「……でも、できるかどうか……」 「できるさ。あたし、信じてるから!」  そう言って笑顔を向ける海奈に、中学生の深也は顔を赤くして俯いた。 (……そういえば、この時だったな。海奈のことが好きになったの)  深也の脳裏に、海奈の笑顔がよぎった。 (海奈が信じてくれたから、少しだけど、変われた気がする。特部の仲間とも出会えて、少しだけ自分が好きになれた)  深也の胸が熱くなる。 (……生きたい。もう一度海奈に……皆に会いたい!)  深也の視界が、白くぼやけ始めた。 (夢なら……覚めろ!)
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