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6 新しい場所へ
翌朝、聖夜と柊は、まとめた荷物を持ちながら玄関に立っていた。
「本当に行っちゃうのね、2人とも……」
夏実の母が寂しそうに言った。
「おばさん……俺達、頑張ってくるから」
聖夜の言葉に、夏実の母は静かに頷く。
「分かってるわ。応援してるからね」
彼女は2人を、優しく抱き締めた。
「聖夜、柊……」
夏実は2人に歩み寄った。
「いつでも帰ってきていいから。……無理だけはしないで」
夏実はそう言って2人の頭を撫でる。その表情は、心配そうに歪んでいた。
「夏実姉さん……」
「……夏実姉ちゃん、俺達、2人で頑張ってくるから。絶対、生きて帰ってくるって約束する」
夏実を安心させようと、聖夜は力強く言った。
「……うん。信じて応援してるからね」
夏実は、聖夜の気持ちに応えようと、無理矢理笑顔を作る。
「いってらっしゃい」
「いってきます!」
「いってきます」
双子が乗った車が見えなくなると、夏実は空を見上げた。春めいた穏やかな青空が、視界いっぱいに広がっている。夏実はその空を見上げながら、少し寂しそうに微笑んだ。
「……私も前、見なくちゃね」
* * *
2人が特部の正面玄関に到着すると、そこには千秋の他に、昨日出会った仲間達が待っていた。
「ようこそ、特部へ」
千秋はそう言って微笑んだ。
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