6 新しい場所へ

1/1

67人が本棚に入れています
本棚に追加
/232ページ

6 新しい場所へ

 翌朝、聖夜と柊は、まとめた荷物を持ちながら玄関に立っていた。 「本当に行っちゃうのね、2人とも……」  夏実の母が寂しそうに言った。 「おばさん……俺達、頑張ってくるから」  聖夜の言葉に、夏実の母は静かに頷く。 「分かってるわ。応援してるからね」  彼女は2人を、優しく抱き締めた。 「聖夜、柊……」  夏実は2人に歩み寄った。 「いつでも帰ってきていいから。……無理だけはしないで」  夏実はそう言って2人の頭を撫でる。その表情は、心配そうに歪んでいた。 「夏実姉さん……」 「……夏実姉ちゃん、俺達、2人で頑張ってくるから。絶対、生きて帰ってくるって約束する」  夏実を安心させようと、聖夜は力強く言った。 「……うん。信じて応援してるからね」  夏実は、聖夜の気持ちに応えようと、無理矢理笑顔を作る。 「いってらっしゃい」 「いってきます!」 「いってきます」  双子が乗った車が見えなくなると、夏実は空を見上げた。春めいた穏やかな青空が、視界いっぱいに広がっている。夏実はその空を見上げながら、少し寂しそうに微笑んだ。 「……私も前、見なくちゃね」 * * *  2人が特部の正面玄関に到着すると、そこには千秋の他に、昨日出会った仲間達が待っていた。 「ようこそ、特部へ」  千秋はそう言って微笑んだ。
/232ページ

最初のコメントを投稿しよう!

67人が本棚に入れています
本棚に追加