32 北日本支部

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* * * 「はっ……!?」  目を覚ますと、瓦礫の中にいた。深也の全身が痛む。……が、幸いにも生きている。落ちてきた瓦礫が重なり合い、偶然にも深也の体が横たわれるだけの空間を作っていたようだった。 (……運が良かった)  深也は体を動かそうと試みたが、足が瓦礫に挟まっているのか、思うように動けない。 (ここから出られなかったら……死んでしまう)  深也は何とか足を動かそうとするが、足の瓦礫はどけられない。 (まずい……どうする)  その時、微かに聞き慣れた声が聞こえた。 「……也……深也!」 「どこにいる!?いたら返事しろ!」 (海奈と翔太君だ……!)  深也は意を決して大きく息を吸った。そして、可能な限り大きな声を出す。 「僕は……僕はここだ!」  しかし、2人からの応答はない。 (気づいてないのか……!?)  深也の心に焦りが生まれた。深也の頭に、見つけてもらえず、瓦礫の中で息絶える未来が頭をよぎる。しかし、深也はその恐れをなんとか振り払った。 (……いや、2人なら見つけてくれる。仲間を信じるんだ)  深也は再び息を吸った。先程よりも大きな声で助けを呼ぶ。 「僕はここにいる!助けて!」  次の瞬間。 「ここです!ここから声が聞こえた!」  翔太の声がして、頭上の瓦礫がどけられた。外の光が入ってきて、深也は眩しさのあまり目を瞑る。 「負傷者発見!……君、大丈夫か?今助けるからな!」  目を開けると、オレンジ色の服を着たレスキュー隊員と目が合った。深也の体の上にある瓦礫が数人がかりでどかされていき、深也はレスキュー隊員によって助け出された。
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