32 北日本支部

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「……助かった?」  救出された安堵感と共に全身の打撲が痛んで、深也はその場に座り込む。 「ああ。君の声に気付いてくれた仲間に感謝しないとな」  レスキュー隊員はそう言って笑顔を見せた。 (……仲間、か)  レスキュー隊員の後ろを見ると、翔太と海奈が不安そうにこちらを見ていた。 「ほら、立てるか?立てるなら、行ってやれ」 「は……はい」  レスキュー隊員に促されて、深也はフラフラ立ち上がり、2人に歩み寄った。 「……翔太君、海奈、助けてくれてありがとう」  そう言って、深也は精いっぱい笑顔を作った。しかし、翔太はそれを鋭く睨む。 「……おい」   「ひぃっ……!?な、何、翔太君……」  あまりの剣幕に、深也はビクリと体をすくめた。 「始めから自分を犠牲にするつもりだったな?」  図星をつかれ、深也は思わず目を逸らした。 「……で、でも、一応脱出しようとはしたんだよ?」 「関係ない。俺はお前が自分を大事にしなかったことに怒っている」  深也がチラリと窺うと、翔太の表情は声色とは裏腹に、とても心配そうな顔だった。 「翔太君……」 「もっと俺達を頼れ。無茶はするな。……仲間だろう」 「も、もしかして、めっちゃ心配してくれてる?」  深也の言葉に翔太は溜息をつき、厳しく深也を睨みつけた。 「……反省しろ」 「は……はい」 「はぁ……オペレーターに報告に行ってくる」  翔太はそう言って山野の元へ走って行った。 「翔太なりに心配してるんだよ」  海奈が苦笑いしながら、深也に言った。 「大丈夫。……十分伝わってるから」  深也はそう言って、海奈に笑いかけた。 「海奈もありがとね。探してくれて……」
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