32 北日本支部

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「天使の瞳で君のハートを射貫いてみせます!浜茄子セナです!」  セナはそう言うと深也に向かってウインクした。 「どう?『魅了』された?」 「どうって言われても……」  深也の様子に、特に異常はない。するとセナは溜息をついた。 「ボクのアビリティは『魅了』。ウインクした相手の心を魅了するんだけど……好きな人がいる人には効かないんだよね」 「す!?すすす……好きな人!?」 「そう。君にはすでに天使がいるんだね……」 「あ、あんまり恥ずかしいこと言わないでくれる!?」  深也は助けを求めて翔太を見た。しかし、翔太はやれやれと首を横に振って言った。 「……俺が逃げてきた意味が分かったか」 「はい……十分に……」 「あ、あんまりそう言わねぇでくれ。2人ともおらの大事な仲間なんだ」  実が慌ててフォローする。それを聞いた深也達は力無く笑った。  それを見ていた海奈は、眉を下げて複雑そうな顔をしていた。ノアはそれに気が付き、翔太の腕を離して彼女の傍に寄る。 「ねぇ、どうしたの?」 「え?な、何が……」 「顔、曇ってるよ」  ノアに指摘され、海奈は慌てて笑顔を作った。 「大丈夫だよ!ちょっと考え事してただけ」  そう言って深也がいる方を見つめる海奈を見て、ノアは目を輝かせながら耳打ちした。 「もしかして、彼があなたの王子様?」 「え?」 「私、応援しちゃう!頑張ってね!」 「お、おい……俺は、そういう話は……」  海奈はノアの言葉を否定しようとしたが、上手く言葉が出てこない。それだけではなく、否定するのが、なんとなく苦しかった。 (こんな気持ちになるなんて、俺、どうしたんだ……?)  海奈が胸に手を当てて考え込んでいると北日本支部の建物の方から山野の声が聞こえた。 「中央支部の皆さーん!」  声の方を見ると、山野がこちらへ駆け寄ってくるところだった。 「ワープパネル、復活しました!」 「ありがとうございます。……総隊長の作戦もある。戻ろう」  翔太の言葉に、海奈と深也は頷いた。 「今日はありがとう!また任務があったら来てけれ」  実がそう言うと、セナとノアも微笑んだ。 「実を助けてくれてありがとう!」 「今度はゆっくりお話ししましょうね!」 「……ああ。またな」  翔太達は3人に頷き、ワープパネルへ向かった。
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