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33 南日本支部
* * *
一方、聖夜と柊は南日本支部に到着していた。高台に建てられた建物のため見晴らしが良いはずだが、霧に包まれて周囲が見渡せない。
「……すごい霧」
「ああ……」
柊に相槌を打ちつつも、聖夜の頭の中は別のことでいっぱいだった。
(ノエル……俺達の敵なのか?それに高次元生物は元人間……俺、ちゃんと戦えるのかな?)
「聖夜?」
「あ……なんでもない」
「ならいいけど……任務なんだから、集中しよ」
「……うん」
(そうだ。俺達が戦わなきゃ、傷つく人が居る……。覚悟決めなきゃな)
聖夜は深呼吸して気持ちを落ち着ける。その時、通信機から声が聞こえた。
『聖夜君、柊さん、聞こえる?』
「琴森さん!はい、聞こえます」
聖夜は通信機に向かって返事をした。
『南日本支部にはオペレーターがいないから、こちらからサポートするわ。真崎さんと旭さんと一緒にね』
「旭も……?」
『……聖夜、柊、頑張って』
旭の控えめな声に、聖夜と柊は顔を見合わせて頷く。
「任せてくれ、旭!」
「サポート、よろしくね」
『……うん!』
旭の嬉しそうな声を聞き、聖夜はふっと頬を緩めた。
(……旭も特部に馴染んできてよかった)
その時。
「聖夜、後ろ!」
柊の声を聞き、背後を振り返ると腕の筋肉が異様に発達した人型の怪物が、聖夜に襲いかかってくるところだった。
「何!?」
唐突な出来事に聖夜は体勢を崩してしまう。
「聖夜!」
高次元生物の拳が、聖夜に迫る。
(しまった……!)
次の瞬間、黄色いマントを纏った黒髪の少年が、高次元生物の前に現れた。
「『盾』!」
大きな盾が、高次元生物の攻撃を防ぐ。
「大丈夫ですか?」
少年は聖夜を振り返ると、穏やかに微笑んだ。彼の右目は長い前髪で隠れているが、左目の眼差しだけでも、彼の優しい雰囲気は伝わってくる。
「君は……南日本支部の?」
「はい。守谷優一です。アビリティは『盾』。よろしくお願いします」
「俺は宵月聖夜。助けてくれてありがとな」
「いえいえ。お互い様ですから」
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