33 南日本支部

6/14
前へ
/232ページ
次へ
 聖夜の拳が加速され、勢いよく振り下ろされる。重力も相まって普段の倍以上の威力になった攻撃が、高次元生物に炸裂する。  その瞬間、高次元生物の鉄の体にヒビが入り、バラバラに砕け散った。 「……やったか?」 『高次元生物の反応消滅!やりましたね!2人とも!』  真崎の声が聞こえて、聖夜は安堵の表情を浮かべた。 「よかった……やったな。柊」  聖夜は柊の方を見て微笑んだ。しかし、柊は頭を押さえてしゃがみ込んでいた。 「柊……?大丈夫?」 「……うん」  柊はフラフラと立ち上がると、聖夜に向かって笑顔を作った。 「ちょっと……目眩がしただけ」 「そっか……?ならいいんだけど」 「うん。それより……南日本支部の2人を助けに行かなきゃ」  柊はそう言って、蝶の光がある方に走って行った。 「柊……いや、俺も行かなきゃ」  聖夜はその後を追って走った。  やがて、薄れてきた霧の中に筋肉質な高次元生物と戦う2人の姿を見つけた。 「はぁっ!」  憂羽は激しい鞭裁きで敵を痛めつける。しかし、高次元生物は怯まずに腕を振り回した。 「憂羽様!」  優一が盾を持って2人の間に割り込む。敵の攻撃に押されて後ずさりつつも、何とか憂羽を守り抜いた。 「優一、ありがと!」 「当然のことです」 「それにしても、視界が『蝶』に塞がれてるからって……乱暴すぎるわ」  憂羽は高次元生物を睨んだ。蝶を振り払うのを諦めたのか、腕を闇雲に振り回している。 「これじゃ埒が開かない……」  憂羽が呟いたその時。 「『遅延』!」  柊のアビリティで、高次元生物の動きが遅くなった。 「聖夜!」 「ああ!」  憂羽の横を、聖夜が猛スピードで駆け抜ける。
/232ページ

最初のコメントを投稿しよう!

67人が本棚に入れています
本棚に追加