33 南日本支部

11/14
前へ
/232ページ
次へ
 平然とそう言うノエルを目の当たりにして、聖夜の瞳が揺れる。  信じられなかったのだ。信じたくなかったのだ。あの日、自分を助けてくれた、心優しいノエルが、自分の敵なのだということが。 「何でこんなことするんだ?高次元生物を生み出したのも、高次元生物で人を傷つけようとするのも、全部ノエルの意思なのか!?」 「何を当たり前のことを聞いているの?これは僕達の意思。それ以外あり得ない。僕達の計画を邪魔する人間は、全て潰すのみだ」 「なら……何で俺のことを助けたんだ!」  聖夜が震える声で尋ねると、ノエルは寂しそうに笑った。 「……似てるんだよ。僕の大切だった(・・・)人に」 「大切だった人……?」 「そう。特に優しい眼差しがね」  ノエルはそう言うと、聖夜に右手を差し伸べた。 「聖夜、僕達の仲間にならないか?」 「な、仲間……?」 「そう。悪いようにはしないよ……そうしたら、君の仲間達もこれ以上傷つけないと約束する」  思いも寄らない提案に、聖夜は言葉を失った。 (仲間になったら、柊や特部のみんなは傷つかなくて済むのか……でも……) 「聖夜、駄目!」  柊はフラフラとノエルに歩み寄り、その顔を睨み付けた。 「私達の任務は、高次元生物を倒してみんなを守ること。……あなた達のことも、絶対倒すから」 「柊……」 「聖夜、悩むことないよ。私達は……聖夜の仲間は、そう簡単に負けないんだから」  柊はそう言って、聖夜を力強く見つめる。 「……うん。そうだったな」  聖夜は頷くと、ノエルの手を払った。 「俺、仲間にはならない。ノエル達が高次元生物でみんなを傷つけようとするなら、全力で戦う」 「……そうか。残念だ」  ノエルはそう言うと、ウォンリィの肩を叩いた。 「ウォンリィ、帰るよ」 「……はい、リーダー」
/232ページ

最初のコメントを投稿しよう!

67人が本棚に入れています
本棚に追加