33 南日本支部

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 ウォンリィはポケットからキューブを取り出した。すると、辺りが眩しい光に包まれる。 「何だ……!?」 「聖夜、またね」  光が収まると、そこに2人の姿は無かった。 (ノエルは敵……結局、ノエルがアビリティは争いの元だって言う理由とか、俺達を支配しようとする理由は聞けずじまいだったな……。でも、とにかく止めないと……)  聖夜が黙り込んでいると、柊が聖夜の頬をつねった。 「いひゃい(痛い)!」 「聖夜、切り替えて!」 「わ、分かった!分かったから離して!」  柊は手を離すと、聖夜に笑いかけた。 「難しいことは置いといて、私達は私達のするべきことをしようよ」 「……うん、そうだな」  聖夜は柊に笑い返して頷いた。 「聖夜、柊!」  旭が2人の元へ駆け寄ってきた。 「お疲れ様……私のオペレーション、大丈夫だった?」  心配そうに尋ねる旭に、2人は優しく微笑む。 「バッチリだったよ」 「旭、助けてくれてありがとな」 「う、うん!」  旭は少し照れながら頷いた。穏やかな潮風が、3人の髪を揺らす。海を見ると、夕焼けによって波がキラキラと輝いていた。 「海、初めて見たけど、こんなに綺麗なんだね……」 「旭、折角だし近くまで行って見てくれば?」  柊の提案に、旭は目を輝かせた。 「いいの?」 「もちろん!ほら、聖夜も一緒に行ってきなよ」 「俺も?柊は?」 「私は……まだちょっと具合悪いから、ここで休んでる」  明るく振る舞っている柊だったが、確かに顔色が優れなかった。 「柊、1人で大丈夫か……?」 「平気。私より、旭を1人にする方が心配でしょ。ここ、知らない場所だし、海の事故だって怖いし……。旭も、1人じゃ不安だよね?」  柊に尋ねられ、旭は少し恥ずかしそうに頷いた。 「……そっか。じゃあ行ってくるよ。旭、行こう」 「う……うん!」  聖夜と旭が高台の階段を降りて行く。その後ろ姿を見ながら、柊は1人その場にしゃがみ込んだ。 (アビリティを使いすぎると、気持ち悪くなる……最近、酷いかも)
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