67人が本棚に入れています
本棚に追加
ウォンリィはポケットからキューブを取り出した。すると、辺りが眩しい光に包まれる。
「何だ……!?」
「聖夜、またね」
光が収まると、そこに2人の姿は無かった。
(ノエルは敵……結局、ノエルがアビリティは争いの元だって言う理由とか、俺達を支配しようとする理由は聞けずじまいだったな……。でも、とにかく止めないと……)
聖夜が黙り込んでいると、柊が聖夜の頬をつねった。
「いひゃい!」
「聖夜、切り替えて!」
「わ、分かった!分かったから離して!」
柊は手を離すと、聖夜に笑いかけた。
「難しいことは置いといて、私達は私達のするべきことをしようよ」
「……うん、そうだな」
聖夜は柊に笑い返して頷いた。
「聖夜、柊!」
旭が2人の元へ駆け寄ってきた。
「お疲れ様……私のオペレーション、大丈夫だった?」
心配そうに尋ねる旭に、2人は優しく微笑む。
「バッチリだったよ」
「旭、助けてくれてありがとな」
「う、うん!」
旭は少し照れながら頷いた。穏やかな潮風が、3人の髪を揺らす。海を見ると、夕焼けによって波がキラキラと輝いていた。
「海、初めて見たけど、こんなに綺麗なんだね……」
「旭、折角だし近くまで行って見てくれば?」
柊の提案に、旭は目を輝かせた。
「いいの?」
「もちろん!ほら、聖夜も一緒に行ってきなよ」
「俺も?柊は?」
「私は……まだちょっと具合悪いから、ここで休んでる」
明るく振る舞っている柊だったが、確かに顔色が優れなかった。
「柊、1人で大丈夫か……?」
「平気。私より、旭を1人にする方が心配でしょ。ここ、知らない場所だし、海の事故だって怖いし……。旭も、1人じゃ不安だよね?」
柊に尋ねられ、旭は少し恥ずかしそうに頷いた。
「……そっか。じゃあ行ってくるよ。旭、行こう」
「う……うん!」
聖夜と旭が高台の階段を降りて行く。その後ろ姿を見ながら、柊は1人その場にしゃがみ込んだ。
(アビリティを使いすぎると、気持ち悪くなる……最近、酷いかも)
最初のコメントを投稿しよう!