33 南日本支部

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 柊の脳裏に、以前任務で見た幻が蘇った。入院する自分に、1人にしないでくれと泣いていた聖夜の顔が頭をよぎる。 (私、聖夜を1人にしちゃうのかな?……いや、聖夜は大丈夫。だってもう1人じゃないもん)  柊はそう思って自分を安心させようとしたが、何故か胸がズキリと痛んだ。 (聖夜のことは心配しなくて大丈夫……なのに、どうして胸が痛いんだろう……) 「大丈夫?体調でも悪い?」 「え?」  柊が顔を上げると、憂羽が心配そうに様子を伺っていた。 「あ……だ、大丈夫!」 「そう?じゃあ悩み事?」 「え、えっと……」 「優一も本部に報告しに行ってていないし、女の子同士だし、あたしが相談に乗るわよ」  憂羽はそう言うと、柊の隣にしゃがみこむ。そんな彼女を見て、柊は意を決して口を開いた。 「あんまり上手く言えないんだけど……聖夜と離れ離れになることを考えると、胸が苦しくなるの。聖夜のこと、1人にする訳じゃないのに……何でかな?」  柊が尋ねると、憂羽は優しく微笑んで言った。 「簡単じゃない。聖夜の傍に居たいからよ」 「傍に、居たいから?」 「そう!要するに、聖夜のことがすごく大事ってことね」 「大事……でも、このままでいいのかな?」 「いいに決まってるでしょ?だって素敵な事じゃない!」  憂羽は柊に向かってにっこりと笑った。 「まぁ今日の様子を見た限り、心配しなくても聖夜だってあなたのこと大事に思ってるわよ」 「そう……だね」  憂羽の言葉に、柊は胸の痛みが引いていくのを感じた。 (聖夜が大事……そっか、私、寂しかったんだ。私が1人にするんじゃなくて、私が1人になるのが怖かったんだ。だから、旭のことも、あんなにモヤモヤしてたんだ……)  柊は胸に手を当てて、小さく微笑む。 (私は聖夜が大事だし、聖夜も、私のことを考えてくれてる……。旭だって、私にとって優しい友達。2人なら……付き合った後も、きっと私とも仲良しのままでいてくれる、よね) 「解決した?」 「……うん!ありがとね」  憂羽の言葉に、柊はしっかりと頷いた。
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