67人が本棚に入れています
本棚に追加
柊の脳裏に、以前任務で見た幻が蘇った。入院する自分に、1人にしないでくれと泣いていた聖夜の顔が頭をよぎる。
(私、聖夜を1人にしちゃうのかな?……いや、聖夜は大丈夫。だってもう1人じゃないもん)
柊はそう思って自分を安心させようとしたが、何故か胸がズキリと痛んだ。
(聖夜のことは心配しなくて大丈夫……なのに、どうして胸が痛いんだろう……)
「大丈夫?体調でも悪い?」
「え?」
柊が顔を上げると、憂羽が心配そうに様子を伺っていた。
「あ……だ、大丈夫!」
「そう?じゃあ悩み事?」
「え、えっと……」
「優一も本部に報告しに行ってていないし、女の子同士だし、あたしが相談に乗るわよ」
憂羽はそう言うと、柊の隣にしゃがみこむ。そんな彼女を見て、柊は意を決して口を開いた。
「あんまり上手く言えないんだけど……聖夜と離れ離れになることを考えると、胸が苦しくなるの。聖夜のこと、1人にする訳じゃないのに……何でかな?」
柊が尋ねると、憂羽は優しく微笑んで言った。
「簡単じゃない。聖夜の傍に居たいからよ」
「傍に、居たいから?」
「そう!要するに、聖夜のことがすごく大事ってことね」
「大事……でも、このままでいいのかな?」
「いいに決まってるでしょ?だって素敵な事じゃない!」
憂羽は柊に向かってにっこりと笑った。
「まぁ今日の様子を見た限り、心配しなくても聖夜だってあなたのこと大事に思ってるわよ」
「そう……だね」
憂羽の言葉に、柊は胸の痛みが引いていくのを感じた。
(聖夜が大事……そっか、私、寂しかったんだ。私が1人にするんじゃなくて、私が1人になるのが怖かったんだ。だから、旭のことも、あんなにモヤモヤしてたんだ……)
柊は胸に手を当てて、小さく微笑む。
(私は聖夜が大事だし、聖夜も、私のことを考えてくれてる……。旭だって、私にとって優しい友達。2人なら……付き合った後も、きっと私とも仲良しのままでいてくれる、よね)
「解決した?」
「……うん!ありがとね」
憂羽の言葉に、柊はしっかりと頷いた。
最初のコメントを投稿しよう!