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* * *
聖夜は旭と2人で浜辺を歩いた。夕日に照らされて輝く波を見て、旭は優しく微笑む。
「キラキラしてる……。本当に、綺麗」
「うん。そうだな」
「水、触ってみてもいい?」
「いいけど……飲んじゃ駄目だぞ」
「どうして?」
「すごくしょっぱいんだ」
「ほんと?」
旭は浜辺の波に触れると、濡れた手を少しだけ舐めてみた。
「わ!……ほんとだ、しょっぱい」
驚いて目をパチパチさせた後、楽しそうに笑う旭を見て、聖夜もつられて笑った。
「あはは!だから言っただろ?」
「うん……初めて知った」
旭はそう言って、聖夜を優しく見つめる。蜂蜜色の瞳が、柔らかな夕日の光に照らされて、優しくきらめく。
「聖夜達に会ってから、初めてなこと、沢山見つけたよ」
「そうなのか?」
「うん。ご飯が美味しかったのも、誰かの力になりたいって思ったのも、綺麗な海を見たことも……全部、初めて」
そう言って、旭は明るい笑顔を見せた。その花開くような可愛らしい笑顔に、聖夜は少し見とれてしまう。
「旭……」
「もっと知りたい。今まで知らなかったものに、もっと触れたい……そう思えるのも、初めて」
潮風が優しく吹いて、旭の髪がなびく。明るい茶髪が夕日に照らされて、キラキラと輝いた。
「だから、教えて。聖夜の好きな景色、好きな食べ物、好きな物……私も見てみたいから」
旭の言葉に聖夜は頷き、どこまでも広がる青空のように、穏やかな笑顔で応えた。
「分かった。全部終わったら、いっぱい教えるよ。色んなもの、色んな場所……一緒に見に行こう。約束な!」
「うん!」
2人の間に、優しい潮風が吹き抜ける。聖夜と旭は、いつか来るであろう未来を心待ちにしながら、互いの笑顔を見つめ合った。
この約束を果たせる日が、いつになるかは分からない。だが、今はただ、2人笑い合える今があることが幸せだった。
『聖夜君、聞こえる?』
不意に、通信機から琴森の声が聞こえてきた。
「琴森さん?どうかしたんですか?」
『柊さんと旭さんを連れて、今すぐ戻ってきて!』
「え?何かあったんですか!?」
『今朝の任務まで、もうあまり時間が無いの。とにかく急いで!』
「分かりました……!旭、戻ろう」
「う、うん」
聖夜と旭は、南日本支部のワープパネルに向かって走り出した。
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