33 南日本支部

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* * *  聖夜は旭と2人で浜辺を歩いた。夕日に照らされて輝く波を見て、旭は優しく微笑む。 「キラキラしてる……。本当に、綺麗」 「うん。そうだな」 「水、触ってみてもいい?」 「いいけど……飲んじゃ駄目だぞ」 「どうして?」 「すごくしょっぱいんだ」 「ほんと?」  旭は浜辺の波に触れると、濡れた手を少しだけ舐めてみた。 「わ!……ほんとだ、しょっぱい」  驚いて目をパチパチさせた後、楽しそうに笑う旭を見て、聖夜もつられて笑った。 「あはは!だから言っただろ?」 「うん……初めて知った」  旭はそう言って、聖夜を優しく見つめる。蜂蜜色の瞳が、柔らかな夕日の光に照らされて、優しくきらめく。 「聖夜達に会ってから、初めてなこと、沢山見つけたよ」 「そうなのか?」 「うん。ご飯が美味しかったのも、誰かの力になりたいって思ったのも、綺麗な海を見たことも……全部、初めて」  そう言って、旭は明るい笑顔を見せた。その花開くような可愛らしい笑顔に、聖夜は少し見とれてしまう。 「旭……」 「もっと知りたい。今まで知らなかったものに、もっと触れたい……そう思えるのも、初めて」  潮風が優しく吹いて、旭の髪がなびく。明るい茶髪が夕日に照らされて、キラキラと輝いた。 「だから、教えて。聖夜の好きな景色、好きな食べ物、好きな物……私も見てみたいから」  旭の言葉に聖夜は頷き、どこまでも広がる青空のように、穏やかな笑顔で応えた。 「分かった。全部終わったら、いっぱい教えるよ。色んなもの、色んな場所……一緒に見に行こう。約束な!」 「うん!」  2人の間に、優しい潮風が吹き抜ける。聖夜と旭は、いつか来るであろう未来を心待ちにしながら、互いの笑顔を見つめ合った。  この約束を果たせる日が、いつになるかは分からない。だが、今はただ、2人笑い合える今があることが幸せだった。 『聖夜君、聞こえる?』  不意に、通信機から琴森の声が聞こえてきた。 「琴森さん?どうかしたんですか?」 『柊さんと旭さんを連れて、今すぐ戻ってきて!』 「え?何かあったんですか!?」 『今朝の任務まで、もうあまり時間が無いの。とにかく急いで!』 「分かりました……!旭、戻ろう」 「う、うん」  聖夜と旭は、南日本支部のワープパネルに向かって走り出した。
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