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* * *
一方、柊は医務室で清野と向かい合わせに座っていた。
「……では、アビリティを使い過ぎると体調を崩すんだね?」
「はい」
柊が頷くのを見て、清野は眉間にしわを寄せた。普段表情を変えない清野の思いがけない様子に、柊は首を傾げる。
「清野さん?すごい顔ですけど、どうかしたんですか?」
すると、清野は真剣な顔で柊を見つめて口を開いた。
「……単刀直入に言う。柊さん、もう戦うのは止めるんだ」
唐突な言葉に、柊は戸惑う。
「え……そ、そんな急に……どうしてですか?」
「高能力症候群……HASの疑いがあるからだ」
清野の答えに、柊は目を丸くした。
「HAS……白雪さんと、同じ……?」
「ああ、それも急性のね。急性は突発的に症状が出るから、体への負担が先天性の倍なんだ」
「そんな……何かの冗談ですよね?」
柊は震える声で尋ねたが、清野は首を横に振った。普段の飄々とした雰囲気はどこにもなく、重苦しい空気が部屋の中に漂う。
「……私は専門医ではない。だが、すぐに病院で検査してもらって適切な処置をするべきだ。これは命に関わる問題だからね」
「命に、関わる……」
重たい言葉に、柊は何も言えずに俯いた。医務室の中に、沈黙が流れる。
その時。
『アビリティ課から連絡が来ました。隊員の皆さんは、朝丘病院に向かって下さい!』
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