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真崎のアナウンスが聞こえてきて、柊は静かに立ち上がった。
「柊さん……!」
「清野さん……ごめんなさい。でも私、皆を守るために戦いたいんです。最後まで……誰かのために頑張りたい。それが私にできる唯一のことだから!」
柊の真っ直ぐな瞳に射貫かれ、清野はしばらく固まっていた……が、すぐに引き出しから錠剤を一錠取り出すと、柊に手渡した。
「……HASの薬だよ。今は弱い物しかストックがないから気休めにしかならないけど、無いよりはマシだ。」
「……いいんですか?」
「ああ。止めても無駄みたいだからね」
清野はそう言って、諦めを覗かせた笑顔を柊に向けた。
「……ありがとうございます!」
柊は清野から薬を受け取ると、駆け足で医務室から出て行った。部屋に取り残された清野は、ふと窓の外を見る。外はもうすっかり日が沈み、星空が広がっていた。
「……特部の隊員って、どうしてこんなに無茶するんだろうね」
清野の脳裏に、大怪我や病気で特部を去らざるを得なかった隊員達の顔が蘇る。
「私にできる唯一のことか。そんなことないのに」
先程の柊の言葉を思い出し、清野は少し苦笑いを浮かべた。
「……私も、私にできることをやりますか」
清野はそう呟いて、病院へ電話をかけた。
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