35 朝丘病院

4/12
前へ
/232ページ
次へ
 言葉を失っている聖夜達に、ノエルは冷たく微笑んだ。 「僕達はその戦争の生き残りだ。だから僕達には……未来を変える義務がある」 「だから……過去を支配しようとするのか?」 「その通り。もう過ちを繰り返さないように、人々にアビリティの恐ろしさを叩き込んで矯正する。その上で僕達が、アビリティによる犯罪が急増した、歴史のターニングポイントであるこの時代を支配する。未来を変えるために……当然のことをしていると思わないか?」 「それは……」 (ノエル達の未来を守るためには、俺達が諦めて支配されるしかないのか?) 「そんなの間違ってるよ!」  何も言えずにいた聖夜の隣で、柊が声を上げた。 「技術力を使って人を高次元生物に変えて、その力で過去を支配する?そんなの、戦争を起こした人達と変わらない!」 「柊……」 「確かにあなた達は未来で大変な思いをしたんだろうけど、あなた達には賛同できないよ!」  柊の言葉に、他の隊員も頷いた。 「……僕達の意見は変わらない。説得して降参させるのは、諦めた方がいいよ」  白雪はそう言ってノエルを真っ直ぐ見据えた。 「……そうか。残念だな」  ノエルは『闇』の能力を解除する。闇が消え去り、エントランスが元通りになった。 「やはり、君達は倒すしかないらしい……ウォンリィ」 「はい。リーダー」  ノエルに促されたウォンリィが、手に持ったスイッチを押した。すると病院中にサイレンが鳴り響き、階段やエレベーターから白い制服姿の兵士達が駆けてきた。 「侵入者だ。倒せ」  ウォンリィがそう言った途端、兵士達は腰に装備していた銃を構え、発砲を始めた。 「『氷壁(ひょうへき)』!」  白雪は咄嗟に氷の壁を作り防御を固める。銃弾が氷にめり込み、ミシミシと音を立てた。 「ノエル……!」  聖夜はノエル達の方を見たが、ノエルはふっと微笑み、仲間を連れて奥の廊下へと姿を消した。 「白雪さん、ノエル達が……」
/232ページ

最初のコメントを投稿しよう!

67人が本棚に入れています
本棚に追加