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言葉を失っている聖夜達に、ノエルは冷たく微笑んだ。
「僕達はその戦争の生き残りだ。だから僕達には……未来を変える義務がある」
「だから……過去を支配しようとするのか?」
「その通り。もう過ちを繰り返さないように、人々にアビリティの恐ろしさを叩き込んで矯正する。その上で僕達が、アビリティによる犯罪が急増した、歴史のターニングポイントであるこの時代を支配する。未来を変えるために……当然のことをしていると思わないか?」
「それは……」
(ノエル達の未来を守るためには、俺達が諦めて支配されるしかないのか?)
「そんなの間違ってるよ!」
何も言えずにいた聖夜の隣で、柊が声を上げた。
「技術力を使って人を高次元生物に変えて、その力で過去を支配する?そんなの、戦争を起こした人達と変わらない!」
「柊……」
「確かにあなた達は未来で大変な思いをしたんだろうけど、あなた達には賛同できないよ!」
柊の言葉に、他の隊員も頷いた。
「……僕達の意見は変わらない。説得して降参させるのは、諦めた方がいいよ」
白雪はそう言ってノエルを真っ直ぐ見据えた。
「……そうか。残念だな」
ノエルは『闇』の能力を解除する。闇が消え去り、エントランスが元通りになった。
「やはり、君達は倒すしかないらしい……ウォンリィ」
「はい。リーダー」
ノエルに促されたウォンリィが、手に持ったスイッチを押した。すると病院中にサイレンが鳴り響き、階段やエレベーターから白い制服姿の兵士達が駆けてきた。
「侵入者だ。倒せ」
ウォンリィがそう言った途端、兵士達は腰に装備していた銃を構え、発砲を始めた。
「『氷壁』!」
白雪は咄嗟に氷の壁を作り防御を固める。銃弾が氷にめり込み、ミシミシと音を立てた。
「ノエル……!」
聖夜はノエル達の方を見たが、ノエルはふっと微笑み、仲間を連れて奥の廊下へと姿を消した。
「白雪さん、ノエル達が……」
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