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旭は言葉に詰まって俯く。そうしている間に、兵士は発砲の姿勢に入っていた。
「……やっぱり、やるしかない!」
柊が構えたその時。
「『竜巻』!」
3人を取り囲んでいた兵士達が竜巻に巻き上げられた。竜巻が止むと、兵士達は次々に落下して動かなくなる。
「翔太君!」
「旭が言ってた宵月博士……お前達の親父さんだろ!?」
翔太は聖夜達に向かって叫んだ。
「うん……そうだけど」
「なら、行け!ここは俺達に任せろ!みんな、いいよな!?」
翔太の言葉に、他の隊員が頷く。
「僕が突破口を開く……『氷結』!」
白雪が指を鳴らすと、階段周辺の兵士達の体が凍り付いた。
「さぁ、早く行くんだ!」
「翔太、白雪さん、みんな……」
「……ありがとうございます!」
「聖夜、柊、こっち!」
聖夜と柊は、旭の背中を追って階段を駆け上った。2階を駆け抜け……3階に到着する。
アビリティ課によって避難させられたのか、病棟の人気は少ない。しかし、廊下の突き当たりにある病室の前で、倒れている人影があった。
「あれは……司!?」
「司君!」
3人は司に駆け寄った。司は辛うじて起き上がると、聖夜と柊を見て安心した表情を浮かべる。
「聖夜、柊……」
「大丈夫か!?」
「僕よりも……この病室の中の人が……」
「この病室……宵月博士の!」
「何だって!?」
聖夜と柊は病室の扉を見た。扉から黒い闇が漏れ出ている。
(……この先に、父さんが居るんだ)
聖夜は覚悟を決め、柊と旭と顔を見合わせて頷いた。
「……柊、旭、行こう」
「うん」
聖夜は病室の扉を開けた。
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