8 写し身の怪人

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 翔太の真っ直ぐな瞳に、柊は覚悟を決めて頷く。 「……分かった」  柊は高次元生物に手のひらを向けて構えた。 「いくよ……!」 「ギィ……!?」  高次元生物が空色の光に包まれ、スローモーションになる。 「今!」  柊の声に、聖夜は頷き、加速した。空色の光が、彼の身体に尾を引く。 「食らえ!」 「ギィ!」  聖夜の拳を食らうギリギリで、高次元生物は遅延を加速で打ち消し、聖夜に遅延をかけた。聖夜の身体を纏っていた空色の光が消える。 「なっ……!」  聖夜の動きが遅れる。高次元生物はその隙に聖夜の顔を殴り飛ばした。 「う゛っ……」 「聖夜!」 「ギィ~!」  ニヤニヤ笑いながら聖夜に加速して追い打ちをかけようとしたその瞬間。  高次元生物の両腕が切り落とされた。 「ギィ……!?」  痛みを認識したのか、高次元生物がその場に崩れ落ちる。地面にできた血だまりは、赤黒かった。 「俺の『かまいたち』だ」  翔太は高次元生物を背後から見下ろして、先ほどまで高次元生物が持っていた銃を拾い、相手に向けた。 「俺達の弱点……それは同時攻撃への対応が難しいこと。アビリティは3人分だったが、いくら知能を持っていても頭は1人分だったようだな」  翔太は、拳銃で高次元生物の頭を撃ち抜く。すると、高次元生物はその場にバタリと倒れて動かなくなった。  それを確認し、翔太は聖夜に歩み寄る。 「……聖夜、立てるか」 「ああ……」  翔太に支えられ、聖夜は何とか立ち上がった。 「ちょっとフラフラする……」 「殴られた衝撃で頭が揺れたんだろう。……無茶させてすまなかった」 「大丈夫だよ。お陰で倒せたし……」  謝る翔太に聖夜は笑顔を見せる。その裏表のない表情に、翔太は眉をひそめた。聖夜は、自分が傷つくことを気にしないのだろうか。それとも、自分の痛みに鈍感なのだろうか。いずれにしろ、少し心配になったのだ。 「聖夜、お前……」 「2人とも!」  翔太が何か言いかけた時、警察に報告をしに行っていた柊が、2人に駆け寄ってきた。 「あとは警察で処理するってさっきの警察官の人が……聖夜、大丈夫?」  柊の問いかけに聖夜は穏やかに頷いた。その様子に、柊も安心した表情を浮かべる。 『みんな、おつかれさま。……あとは警察に任せて、直ちに帰還して』 「了解です」  琴森の声に3人は頷いた。
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