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病室の中は闇で包まれ、黒い狼達が白衣を着た男性を囲っていた。その脇で、ノエルが微笑みながら男性を見ている。
「さぁ、ついてきてもらうよ。宵月明日人」
「く……」
「父さん!」
聖夜が叫ぶと、明日人は目を丸くした。
「聖夜……?聖夜なのか?」
「……やはり来たね。聖夜」
ノエルは聖夜に掌を向けた。すると、狼達が一斉に聖夜へ襲いかかる。
「『加速』!」
聖夜は狼を躱しながら明日人に駆け寄った。
「父さん、大丈夫!?」
「ああ……それより、どうして、ここへ……」
「決まってるだろ!助けに来たんだよ!」
「……!聖夜、後ろだ!」
明日人に言われて振り返ると、狼が飛びついてくるところだった。
「なっ……」
「『停止』!」
柊が咄嗟に叫び、狼が空中で停止する。
「っ……お父さん……!」
柊は少しふらつきながらも明日人の元へ駆け寄った。
「柊……なのか?」
「自分の娘の顔も忘れちゃった?まぁ、もう8年も会ってないから仕方ないか……」
柊はそう言って苦笑いした。
「聖夜……柊……」
明日人の目に涙が浮かぶ。
「もう会えないと思っていた。合わせる顔がないとも思っていた。……でも、会いたかった」
明日人はそう言って2人を抱き締めた。その様子を見て、旭は優しく微笑んだ。
「宵月博士……」
「旭……ありがとう」
「はい!」
旭は笑顔で返事をする。
「……話したいことは沢山あるけど、まずはここを出ないと。アビリティも切れちゃうし」
柊の言葉に聖夜は頷く。しかし、明日人は首を横に振った。
「待ってくれ……まだ、やらなければいけないことがあるんだ」
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