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* * *
聖夜は気が付くと、何も無い、真っ白な空間に立っていた。
「ここは……?」
辺りを見渡すが何も無い。どうすれば良いか分からなくて、聖夜が途方に暮れた時だった。
「聖夜」
「え……?」
聖夜が聞き覚えのある声に振り返ると、旭が微笑みながら立っていた。
「旭……ここがどこだか分かるか?」
「ここは……『命』の受け渡し場所」
「命の……?」
「うん。私のアビリティが作り出した、魂の世界」
「魂の世界……そうだ、俺、撃たれて……」
聖夜が撃たれた胸の辺りに手を当てるのを見て、旭はくすりと笑った。
「ふふ……ここに体は無いから、怪我してても分からないよ」
「あ、そっか……あはは!」
聖夜も旭につられて笑う。しばらく2人で笑い合って……やがて、旭が聖夜の胸に手を当てた。
「旭?」
「私のもう一つのアビリティの『命』はね、自分の命と引き換えに、他の人の命を救うアビリティなの」
旭の手が輝き、その光が聖夜の体に移る。日だまりの中に居るような温もりが、聖夜を包んだ。
「私の命……聖夜にあげる」
「そんなことしたら旭が!」
「……いいの。貴方は世界を救う人だから」
旭はそう言って優しく微笑む。
「短い間だったけど、聖夜と居られて……普通の女の子になれた気がしたの。本当に楽しくて……研究所に閉じ込められてたことも、未来人に捕まってたことも忘れちゃうくらい、明日が楽しみだった」
「旭……」
「誰よりも優しい聖夜に会えて……私、幸せだったよ」
やがて、聖夜の体が消え始める。
「……そんな……嫌だ!旭!!」
必死に叫ぶも空しく、聖夜の体が完全に消え去った。旭は聖夜の居た場所を見つめ、優しく呟いた。
「さよなら……私のヒーローさん」
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