37 過去

1/14
前へ
/232ページ
次へ

37 過去

* * * 「はっ……!」  聖夜が目を覚ますと、タイムマシンの中に居た。自分の右手が握られているのに気が付き確認すると、柊が泣きそうな顔で聖夜を見つめていた。 「柊……」 「聖夜……生きてる?」 「……うん」 「良かった……ほんとに、良かった……」  柊はそう言って、起き上がる聖夜に抱きついた。 「柊……心配かけて、ごめんな」 「ううん……。あ、聖夜!その右目の色、旭と同じ……!」 「目の色……?」  聖夜は窓に映った自分の顔を見た。すると、確かに右目が蜂蜜色に変化していた。 「ほんとだ……そうだ、旭は!?」  聖夜が振り返ると、床に横たわる旭が目に映った。 「っ……旭!」  聖夜は旭に駆け寄り、呼吸を確認した。 「息……してない……柊、旭が……」 「分かってる。今、病院に連れて行くために近くの時代に向かってるから……」  柊が真剣な、でも泣きそうな顔でそう言うと、窓の外の景色が変わった。青い空と、穏やかな町並み……見慣れた、天ヶ原町だった。 「私、運転するね」  柊はそう言って操縦席に向かい、タイムマシンを人気の無い山の麓に駐めた。近くに公衆電話がある。 「救急車呼んで来る!」  柊はタイムマシンを出て、公衆電話に駆けていった。その間、聖夜は旭の手を握り続けた。 (旭……ほんとに、死んじゃったのか……?俺のせいで……?)  ……しばらくして、救急車が到着する。駆けつけた救急隊員によって、旭は救急車に運び込まれた。 「ほら、君も来てくれ。この子の付き添いだろう?」 「は……はい」  聖夜は救急隊員に頷いて、救急車に乗り込んだ。  
/232ページ

最初のコメントを投稿しよう!

67人が本棚に入れています
本棚に追加