37 過去

3/14
前へ
/232ページ
次へ
「そう……です。でも、何で旭のこと……」  聖夜が戸惑っていると、年配の警察官は寂しそうに微笑んだ。 「そういうアビリティなんだよ。それに……私は明星千代美(あきほしちよみ)。この子の祖母だから」 「旭のお祖母さん……!?」 「ああ。まさかこんな風に再会するとは思わなかったよ……」  千代美はそう言って、旭を見つめた。 「さっき病院から連絡があってね……警察官の仕事もあったが、旭の身元を確認するためにも来たんだ」 「……では、この方は貴女の身内……明星旭さんで間違いないのですね?」  医師の言葉に、千代美は静かに頷いた。 「旭は私が引き取ります。これから葬儀会社に連絡しますので……少しお時間を頂けませんか?」 「……分かりました」  医師が頷いたのを確認して、千代美は聖夜達を見た。 「……旭の死は事故だ。『審眼』で視たから間違いない。……私は、これから諸々の手続きを終わらせてくる。全部終わったら、君達を迎えに来るからね。それまで、この病院で待っててくれないか?」 「俺達を……?」  聖夜と柊が不思議そうに首を傾げる。それを見て、千代美は寂しそうな笑みを浮かべた。 「ああ……しばらく私の家に泊まりなさい。未来に戻る前に、旭の葬式に出て欲しいんだ。この子の……友達だったんだろう?」 「……分かりました」 「……ありがとう。河本、一度署に戻るよ」 「は、はい!」  千代美と若い警察官が、霊安室を後にする。それを見送った医師が、聖夜と柊に優しく微笑んだ。 「君達も少し休みなさい。その格好、特部だろう?この時代に来るまで、ずっと戦っていたんじゃないか?」 「……はい」 「2人とも顔色が悪い。水分を取って落ち着いてきた方が良いだろう。無理は良くないからね」 「……分かりました。柊、行こう」 「うん……」  医師に促されるままに、聖夜と柊は霊安室を出た。  
/232ページ

最初のコメントを投稿しよう!

67人が本棚に入れています
本棚に追加