37 過去

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* * *  2人は、病院5階の、自販機のある休憩スペースに向かった。 「柊、何飲む?」 「……水でいい」 「分かった……って、俺、お金持ってないや」 「そういえば……私も」  2人は先程まで任務を行っていたため、財布は寮に置いてきていた。  2人が困った様子で自販機の前に立っていると、1人の女性が脇から自販機に小銭を投入し、りんごジュースを2本買った。 「……あ、すみません!」 「ごめんなさい……今どきます」  聖夜と柊がどこうとすると、女性は2人を抱き締めた。 「な、何だ!?」 「どうしたんですか!?」 「あら、2人とも母さんの顔、忘れちゃった?」 「え……?」 「……急に抱きついてごめんね」  女性に解放され、聖夜と柊はその顔をまじまじと見た。  優しげな空色の瞳、長い黒髪……少し痩せた体。2人は、彼女のことをよく知っていた。 「母さん……!」  宵月しおり。2人の母親だった。 「お母さんが……生きてる……」  衝撃のあまり固まる2人に、しおりは笑顔でりんごジュースを押しつけた。 「2人とも、りんごジュース好きだったよね?」 「あ、ありがとう……っていうか、俺達のこと分かるのか?」  聖夜が尋ねると、しおりは悪戯っぽく笑う。 「勿論!自分の子どもが分からない親はいないでしょ?……って言いたいところだけど、私のアビリティね」 「母さんのアビリティ?」 「言ったことなかったっけ?私のアビリティは『過去』。その人の過去が視えるのよ」 「そうだったんだ……」 「……ここで立ってても邪魔になるし、取り敢えず座らない?母さん、検査終わりで疲れちゃった」 「あ、そうだな……。あそこに座ろう!」  3人は部屋の隅にあるソファに腰掛けた。
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