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* * *
2人は、病院5階の、自販機のある休憩スペースに向かった。
「柊、何飲む?」
「……水でいい」
「分かった……って、俺、お金持ってないや」
「そういえば……私も」
2人は先程まで任務を行っていたため、財布は寮に置いてきていた。
2人が困った様子で自販機の前に立っていると、1人の女性が脇から自販機に小銭を投入し、りんごジュースを2本買った。
「……あ、すみません!」
「ごめんなさい……今どきます」
聖夜と柊がどこうとすると、女性は2人を抱き締めた。
「な、何だ!?」
「どうしたんですか!?」
「あら、2人とも母さんの顔、忘れちゃった?」
「え……?」
「……急に抱きついてごめんね」
女性に解放され、聖夜と柊はその顔をまじまじと見た。
優しげな空色の瞳、長い黒髪……少し痩せた体。2人は、彼女のことをよく知っていた。
「母さん……!」
宵月しおり。2人の母親だった。
「お母さんが……生きてる……」
衝撃のあまり固まる2人に、しおりは笑顔でりんごジュースを押しつけた。
「2人とも、りんごジュース好きだったよね?」
「あ、ありがとう……っていうか、俺達のこと分かるのか?」
聖夜が尋ねると、しおりは悪戯っぽく笑う。
「勿論!自分の子どもが分からない親はいないでしょ?……って言いたいところだけど、私のアビリティね」
「母さんのアビリティ?」
「言ったことなかったっけ?私のアビリティは『過去』。その人の過去が視えるのよ」
「そうだったんだ……」
「……ここで立ってても邪魔になるし、取り敢えず座らない?母さん、検査終わりで疲れちゃった」
「あ、そうだな……。あそこに座ろう!」
3人は部屋の隅にあるソファに腰掛けた。
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