37 過去

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 それを見て、しおりはくすりと笑う。 「聖夜、父さんに似てきたね」 「父さんに……?」 「そう。父さんも真っ直ぐで……時々周りが見えなくなっちゃうの。そっくり!」  しおりは聖夜を優しく見つめ、微笑んだ。 「……聖夜、真っ直ぐ育ってくれてありがとう。柊もね。……傍に居られなくて、ごめんね」 「母さん……」 「……そんなことないよ。お母さんは、私達の心の中で生きてた。ね、聖夜?」  柊の言葉に、聖夜は頷いた。 「うん。俺達、母さんの言葉を守るために、アビ課を受けたんだ!結局落ちて、今は特部だけど……」 「私の言葉?」  首を傾げるしおりに、2人は笑顔で頷いた。 「誰かのために頑張れる人になりなさい!」 「私達、その言葉を守るために戦ってるの!」 「……そっかぁ」  しおりは微笑んで、2人を抱き寄せた。 「その思い、忘れちゃ駄目よ?一度決めたら、最後まで貫きなさい」 「うん!」 「分かってる!」  しっかりと返事をした2人を、しおりはしみじみと見つめた。 「……立派になったなぁ」  しばらくして、3人の元へ千代美がやって来た。 「ああ……ここに居たんだね」 「あ、旭の……」  聖夜が戸惑っていると、千代美が優しく微笑んだ。 「千代美でいいよ」 「千代美さん……早かったですね」 「ああ。許可が下りて、河本が仕事を代わってくれたお陰でね……2人とも、もう行けるかい?」 「は、はい!」  聖夜と柊は立ち上がった。
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