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「あ、ちょっと待って!」
しおりも立ち上がり、2人をもう一度抱き締めた。
「か、母さん!?」
「お母さん!?」
「これで最後だから!聞いて?」
しおりは少し間を置いて、口を開いた。
「まず、聖夜。あんまり我慢しちゃ駄目よ。何でもかんでも仕方ないって諦めちゃ駄目。悲しくて辛い時は泣いてもいいの。自分に正直にね」
「母さん……」
聖夜の脳裏に、母の死に際が蘇った。
あの日、涙を流す父と柊の隣で、聖夜は……泣けずに、ただ母を見つめることしかできなかったのだ。
悲しい気持ちや、寂しい気持ちを見ないフリして、ずっと、流したかった涙を抑え込んでいた。
(そういえば、母さんが死んだ時も泣けなかったんだ……仕方ないって思って、我慢しなきゃ壊れちゃいそうで……)
「約束できる?」
「……うん」
「よろしい!……柊は、無理しちゃ駄目。一生懸命になるのはいいけど、自分を大事にしなさい。分かった?」
「……分かった」
「……よし。約束ね」
しおりは2人から離れて、優しく微笑んだ。
「聖夜、柊……ずっと応援してるからね」
「……母さん、ありがとう」
「お母さん、私達頑張るから!」
聖夜と柊は、しおり笑顔を向けた。
「……柊、行こうか」
「うん」
聖夜と柊は千代美について行き、病院を後にした。
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