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千代美の家は和風な日本家屋だった。居間の棚には歴代の家族写真が飾られており、長い間この家が受け継がれてきたことが分かる。
食事を終え、入浴を済ませてきた聖夜が居間に向かうと、千代美が机の上にアルバムを広げていた。
「……お風呂ありがとうございました。着替えまで借りちゃってすみません」
「祖父さんが昔着てた服だから、気にしなくていいよ」
「ありがとうございます。……柊は?」
「疲れてるようだったから、先に休ませたよ。顔色も悪かったしね」
「そうですか……あの、そのアルバムは?」
「ああ……聖夜君も一緒に見ようか。こっちにおいで」
千代美に促されて、聖夜は彼女の傍らに座る。アルバムの中の、幼い少女が写った写真が聖夜の目に止まった。
「この写真って……」
「うん……これはね、旭が本当に小さかった頃の写真なんだ。4歳くらいの頃かな……」
千代美は懐かしむように、ゆっくりとページをめくる。母親らしい人と一緒に、笑顔で写る幼い旭。聖夜はその笑顔を、海辺で笑っていた旭と重ねた。
「……笑顔、あの時と同じだ」
「あの時……か。聖夜君、旭は君の前でこんな風に笑っていたのかい?」
「あ、はい……この写真と、そっくりな笑顔で……」
「そうかい……きっと、心からの笑顔だったんだろうね」
千代美が優しく微笑む。聖夜はその微笑みを見て、胸の奥が痛むのを感じた。
「……俺がしっかりしてたら、旭は今も生きてたんでしょうね」
「聖夜君……」
「こんなこと言っても仕方ないって分かってます。でも……胸が痛くて」
「……自分を責めるのはよしなさい」
千代美が俯く聖夜の背中を、そっと擦った。
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