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「旭は自分で、君を救うことを決めたんだ。命を懸けて守りたい人に出会えて、あの子はきっと幸せだったはずだよ」
「でも……そうだったとしても、俺を助けたから、旭が……!」
「……君は優しいね。大丈夫。大丈夫だから……涙を拭きなさい」
「え……?」
千代美からハンカチを手渡されて、聖夜は初めて自分が泣いていたことに気付いた。
「俺、泣いてる……?」
聖夜は自分の目元を触った。すると、確かに雫が手に触れる。
「俺、なんで……?母さんが死んだ時ですら、泣けなかったのに……」
「聖夜君……」
「あ、ご、ごめんなさい!すぐ収まりますから……」
「聖夜君、泣いていいよ」
「え……?」
「我慢しなくていい。ここには私しか居ないから……自分に正直になりなさい」
『自分に正直にね』
「あ……」
聖夜の脳裏に、病院で母に言われた言葉が蘇った。その瞬間、涙が堰を切って溢れ出す。
「っ……ごめん、なさい……止まらなくて……」
「謝らなくていいよ」
「うっ……本当に、ごめんなさい……俺……俺……」
「……うん」
静かに背中を擦ってくれる千代美に対して、聖夜は声を震わせながら、心の奥底の本音を打ち明ける。
「俺、生きてて欲しかった。旭に……生きてて欲しかった……!」
「……そうかい」
「旭と一緒に、色んな物が見たかった……!色んな場所に行きたかった……!もっと……笑い合いたかった……!会ったばかりなのに……変、ですかね?」
「……変じゃないよ。大事なのは時間じゃない。想いの強さだからね」
聖夜の問いかけに、千代美は優しい声色で答える。その表情は、聖夜を気遣ってか穏やかなものだった。
「……そう、ですか……ね……」
「……そうだよ」
「……俺にとって、旭は……大事な存在だったんですね……」
「そう言ってくれるだけで、私もあの子も嬉しいよ」
「……はい。ありがとうっ……ございます……」
「礼を言うのはこっちの方だ。旭を大事に思ってくれて、ありがとね」
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