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そう言って千代美は聖夜の背中を擦り続け、やがて、聖夜の涙が収まってきた。
「……気が済んだかい?」
「はい……なんだか、スッキリしました」
そう言って無邪気な笑顔を覗かせる聖夜を見て、千代美は寂しそうに微笑んだ。
「千代美さん……?」
「いや……孫と一緒に暮らしてたら、こんな感じだったのかなと思ってね」
「千代美さん……」
千代美はそっと聖夜の方を向いた。
「……私も、旭に対してずっと後悔してたことがあるんだ」
「後悔……?」
千代美は頷いて、ゆっくりと語り始めた。
「私の『審眼』はね、対象の情報が一目見て分かる能力なんだ。だから、旭にアビリティが2つあることも、すぐに分かった」
「そうだったんですか……」
「ああ。だから私は娘に……旭の母親に言ったんだ。この子にはアビリティが2つあるから、注意してやるようにってね……でも、そのせいで旭は研究所に預けられた」
「旭の母さんは、どうして旭を……」
すると、千代美は切ない表情で旭の親子の写真に触れた。
「鬱病だったんだ。夫が事故死して……仕事も上手くいかなくて……だから、自殺する前に旭を研究所に預けた。私じゃなくて、研究所に……私は頼りにされてなかったのさ。」
「そんな……」
「……娘と旭と、無理矢理にでも一緒に暮らしていたら……娘ともっと仲が良かったら……今でも、そう思うよ」
「千代美さん……」
「……すまないね。こんな話、聞きたくなかったろう?」
千代美は寂しそうな微笑みを聖夜に向けた。
「……明日からバタバタするからね。もう休みなさい」
「あ……はい。おやすみなさい」
聖夜はアルバムを片付ける千代美に上手く声を掛けられず、部屋に戻ることしかできなかった。
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