37 過去

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* * *  寝室に向かうと、柊が起きて窓の外を眺めていた。 「柊?寝てなかったのか?」 「……うん。なんか目が覚めちゃって」  柊は苦笑いすると、聖夜に手招きした。 「流れ星を見てたの。聖夜も来て」 「流れ星?」  聖夜は柊の隣に座って、窓の外を見た。すると、満天の星空を流れ星がいくつも流れていた。 「天ヶ原町名物、初夏の流れ星だっけ。昔、夏実姉さんとよく見たよね」 「ああ……懐かしいな」 「聖夜、願い事を3回唱えられなくて泣いてたよね?」 「うっ……そんなことまで覚えてたのか……」  苦笑いする聖夜を、柊は茶化すように笑った。 「……ねぇ。今、何か願うとしたら、聖夜は何をお願いする?」 「願い事か……悩むな……」  聖夜の頭に様々な願い事が浮かぶ。 「未来を変えられますように……今を守れますように……って、どれも俺が頑張ることか」 「ふふ、確かにね」  聖夜と柊は顔を見合わせて笑った。 「……柊は、何をお願いするんだ?」 「私?うーん……そうだな……」  柊は少し悩んだ後、聖夜の顔を見て微笑んだ。 「……聖夜が前に進めますように」 「え……?」 「泣き声、ここまで聞こえてたよ?」 「あ、さっきの……聞こえてたのか」  聖夜は恥ずかしそうに目を逸らす。それを見た柊が優しく頷いた。 「うん。旭のことが大事だったんだよね……辛かったんだよね」 「柊……?」 「……私ね、旭に聖夜が取られて、一人ぼっちになっちゃうんじゃないかって思ってたの」 「え……」 「酷いでしょ?でもね、それだけ2人は仲良さそうに見えたの。だから……私、1人で焦ってたんだ。」  柊の告白に、聖夜は目を丸くした。
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