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翌日から執り行われた旭の葬儀が、静かに終えられた。未来から来た人間の葬儀だからか、千代美は2人以外に人を呼んでおらず、葬儀も簡単な物だった。
葬儀を終え、聖夜と柊はセレモニーホールの外で、千代美と向かい合っていた。
「……もう行くのかい?」
「はい……お世話になりました」
聖夜がそう言って頭を下げると、千代美は微笑んで頷いた。
「礼を言いたいのはこちらの方だよ。最後まで、旭の傍に居てくれて……あの子に少しの間だけでも幸せをくれて、本当にありがとう。どれも私にはできなかったことだ」
「千代美さん……それは、違うと思います」
「え?」
目を丸くする千代美を、聖夜は真っ直ぐ見つめた。
「アルバムの中の旭は、どれも笑顔だった。千代美さんの傍に居たとき、旭は確かに幸せだったんだと思います」
「聖夜君……」
「俺達、前を向きます。旭が信じていた未来を実現するために……立ち止まりません。だから、千代美さんも前を向いて下さい」
聖夜の言葉に、千代美はポロリと涙を零した。
「……若者に、元気づけられるなんてね」
千代美は泣きながら、聖夜と柊に微笑んだ。
「分かった。私も前を向くよ。君達のことも応援する。だから……たまには、旭に会いに来てやってね」
「……はい!」
聖夜と柊は頷いて、千代美に微笑んだ。
(もう泣かない。俺は、前に進むんだ)
聖夜と柊は千代美に軽くお辞儀をして、セレモニーホールからタイムマシンへ向かって走り出した。
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