38 帰還

1/4
前へ
/232ページ
次へ

38 帰還

* * *  2人はタイムマシンに乗って、現代の特部中央支部へ向かっていた。聖夜がタイムマシンの操縦桿を握り、柊がすぐ傍に立っている。 「みんな、大丈夫かな……」 「……信じるしかないね」  その時。唐突に通信機から琴森の声が聞こえてきた。 『聖夜君、柊さん!』 「琴森さん!?」 『良かった。やっと繋がった!……総隊長、2人と連絡が取れました!』  琴森がそう言うと、声が千秋に切り替わる。 『聖夜、柊、無事か?』 「総隊長!はい。俺と柊は大丈夫です……でも、旭が……」 『旭に何かあったのか?』 「はい……俺を助けるために、命を……」 『……そうか』  千秋と聖夜達の間に、しばらく沈黙が流れる。その沈黙を破ったのは、柊だった。 「総隊長、みんなや父は無事ですか?」 『……ああ。特部もアビリティ課も全員無事だ。明日人さんも……怪我をしているが、命に別条はない』  千秋の言葉に、聖夜と柊は顔を見合わせて安堵の溜息をつく。すると、窓の外の景色が変わり、タイムマシンは天ヶ原町上空に出た。 「総隊長、もうすぐ中央支部に着きます!」 『分かった。詳しい報告は後から聞こう……待っているよ』  通信が切れ、聖夜は操縦桿の操作に集中した。安定した操縦で、中央支部の敷地の隅にタイムマシンを駐める。 「……着いた!行こう柊!」  聖夜が柊に声を掛けたその時だった。 「……う」  柊が、ばたりと倒れたのだ。 「柊!?」 「あ……聖夜……」 「柊、大丈夫か!?」  聖夜は柊を抱き起こす。柊の呼吸は浅く、顔色は悪かった。 「私、駄目だな……傍に居るって、約束したのに……」 「っ……!そんなこと言うなよ!諦めちゃ駄目だ!すぐ医務室に連れて行ってやるからな!」  聖夜は柊を抱きかかえて、医務室に急いだ。
/232ページ

最初のコメントを投稿しよう!

67人が本棚に入れています
本棚に追加