38 帰還

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「……総隊長、ノエル達は?」  聖夜に尋ねられ、千秋は首を横に振る。 「爆破された建物の中から、彼らは見つかっていない。恐らく、どこかに潜んでいるんだろう」 「ノエル……一体どこに……」  その時。 「痛っ……」  聖夜は蜂蜜色になった右目が痛み、思わず目を瞑った。  すると、瞼の裏側に、町中で闇の狼が暴れ回る光景が映った。狼と戦う特部……そして、天ヶ原町の中心、天ヶ原中学校の屋上から階段を伸ばした、黒い天空の城。その中で冷たく笑うノエルの姿。 (これは……旭の『未来予知』……?) 「聖夜、大丈夫か?」  痛みが引いて目を開けると、傍らの翔太が心配そうに聖夜の顔を覗き込んでいた。 「……ああ。それよりも、ノエル達が……」  聖夜が視た内容を話そうとしたその時。  ゴゴゴゴゴ……!  地面が大きく揺れ始め、空が闇に包まれる。 「何だ……!?」  海奈が窓辺に駆け寄り外を見ると、町の至る所で闇の狼が暴れ回っていた。 「この闇……きっとあいつらだ!総隊長!」  海奈の声に千秋は頷き、隊員達を見た。 「中央支部隊員、出動せよ!未来人から人々を守れ!」 「了解!」  隊員達が続々と医務室を出て行く中、聖夜は柊を振り返った。 「柊……絶対、戻ってくるからな」  そう呟くと、聖夜は他の隊員達の後を追った。 「……琴森、真崎、オペレーションを頼む。明日人さんは柊の傍に居てやって下さい」 「ああ……千秋はどうするんだ?」 「……仲間を守りに行きます。それが、今の()の務めですから」  千秋はそう言って医務室を後にした。
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